前ロッテ・田中英 環境に左右されない「トッププレーヤーのすごさ肌で感じた」
【第2の人生へプレーボール】
史上初の京大出身プロ野球選手として注目を集めた前ロッテ・田中英祐投手(25)は、わずか3年の現役生活でユニホームを脱いだ。野球人生にも区切りを付け、今春からプロ入り時に一度は内定を辞退した三井物産に入社する。思うような活躍ができなかった秀才右腕の苦悩と決断を追う。
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田中は現在、4月1日の三井物産入社に向けて準備中だ。
プロ野球は自主トレ便りが届くようになった。114人のルーキーたちもまた、寒気の中で熱い息を吐いている。野球の無名校出身者がいれば、東大法学部の日本ハム・宮台もいる。
宮台は同じ高学歴で注目を集めそうだが、田中は「自分はプロで結果を残せていないので、安直にアドバイスできる立場にはないと考えています」と話しながらも、キッパリと言い切った。
「ただ私が言えることは、私にとってプロで野球ができたことは本当に貴重な体験だったということです」
17年10月3日、田中は球団幹部から戦力外を通告された。「今年は勝負の年になると思っていた」と覚悟はしていたが、秋風がやけに身に染みた。
その田中に3年前に内定を辞退した三井物産の採用担当者から「もう一度、就職試験を受けてみないか」との誘いがあった。
田中のプロ3年間の成績は2試合で0勝1敗、防御率13・50。15年5月1日の日本ハム戦を最後に1軍から姿を消した。
田中はプロ野球の壁をこう振り返る。
「自分の良い状態を環境に左右されず、1年間通して維持する難しさを痛感し、それを何年にもわたって続けるトッププレーヤーのすごさを肌で感じた」
話題先行でイップスにも陥った。それでもサイドスローに挑戦するなど、厚く高い壁を越える努力を重ねた。
人生100年時代にあって、3年間はある意味有意義な“社外研修”だった。採用を決めた三井物産の懐の深さがうかがえる。田中は「世界中の挑戦する人たちのために社会に新たな価値を提供したい」と入社後を見つめる。
さらばプロ野球、とは言わない。「今後はプロ野球ファンとして、陰ながら応援させていただきたいと思っております」-。
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田中 英祐(たなか・えいすけ)1992年4月2日生まれ、25歳。兵庫県出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。白陵から京大を経て、14年度ドラフト2位でロッテ入団。15年4月29日・西武戦(QVCマリン)でプロ初登板初先発(敗戦)。17年10月に戦力外通告を受け現役引退。今春から三井物産に就職。