高校野球 「春は投手力」に変化 強打も上位進出のカギに
春のセンバツ高校野球は、ベスト4が出そろった。顔ぶれは2年連続の大阪桐蔭を筆頭に、7年ぶりの東海大相模(神奈川)、18年ぶりの智弁和歌山、49年ぶりの三重の4校。いずれもセンバツ大会の優勝経験校となった。
春は投手力-。高校野球界では定説となっているが、4チームに共通するのは圧倒的な攻撃力だ。大会前から優勝候補筆頭に挙げられていた大阪桐蔭は根尾、藤原ら多数のプロ注目選手をそろえ、花巻東(岩手)との準々決勝は19-0で圧倒。3試合で、計38得点と驚異的な得点力を誇る。
だが、他の3校も負けていない。東海大相模は初戦の聖光学院(福島)を12-3で破るなど、3試合で計23得点。智弁和歌山も準々決勝で創成館(長崎)との壮絶な打撃戦を11-10で制するなど、計22得点。三重も準々決勝の星稜(石川)に打ち勝つなど、ここまで計24得点。4チーム全て、1試合の平均得点が7得点以上となっている。
4チームともに、複数投手で勝ち上がっているのも特徴だ。大阪桐蔭はエース柿木という絶対的な柱がいるものの、3回戦の明秀日立(茨城)戦では背番号6の根尾が完投勝利。柿木をうまく温存しながら、準決勝までを勝ち抜いた。
東海大相模も、地区大会の防御率0・00のエース斎藤に注目が集まっていたが、強打を誇る静岡、日本航空石川との戦いではいずれも左腕の野口が先発。相手打線の目先を変えながら、斎藤との継投で勝ち上がった。三重、智弁和歌山も攻撃力が売りとはいえ、複数投手を起用しながら相手の攻撃をかわしてきた。
近年のセンバツ優勝校を振り返ると昨年の大阪桐蔭には徳山、一昨年の智弁学園(奈良)には村上、15年の敦賀気比には平沼など、絶対的なエースを中心に頂点まで登り詰めた。ただ、故障防止の観点から、高校野球界にもひとりの投手に頼り切る風潮がなくなりつつあるのも現実だ。
攻撃力の進歩も、複数投手が主流となりつつある要因だろう。東海大相模の門馬監督は「春は実戦から半年近く離れている。初戦の入り方が本当に難しいんです」と語るが、近年はセンバツ大会前に沖縄などの温暖地域に出向いて実戦をこなすチームが増えるなど、調整方法でそれぞれが工夫。筋力トレーニングや打撃マシンの高速化、データ野球も浸透してきた。センバツでも相手の攻撃力をいかにかわすかがキーポイントになってきており、複数投手でかわす戦術が高校球界でも増加傾向になっている。
大会前、門馬監督は「大阪桐蔭が頭ひとつ抜けているが、それ以外のチームも力は拮抗している。面白い戦いになるのでは」と語っていた。2日の休養日をはさみ、東海大相模-智弁和歌山、大阪桐蔭-三重の準決勝は3日に行われる。紫紺の優勝旗をかけた熱い戦いに注目が集まる。(デイリースポーツ・佐藤啓)