大阪桐蔭、史上3校目の春連覇 根尾で歓喜

 「選抜高校野球・決勝、大阪桐蔭5-2智弁和歌山」(4日、甲子園球場)

 決勝が行われ、大阪桐蔭が1981~82年にPL学園が達成して以来36年ぶり、史上3校目のセンバツ連覇を成し遂げた。今秋ドラフト1位候補の根尾昂内野手(3年)が、公式戦初の連投で140球を投げて完投。史上初の2年連続の“胴上げ投手”となった。西谷浩一監督(48)は史上最多タイとなる6度目の甲子園制覇。智弁和歌山は強力打線が6安打に終わり、94年以来24年ぶり2度目の優勝を逃した。

 達成感が全身を駆け巡った。九回2死一塁。根尾は一塁手のトスを受け、ベースを駆け抜けた。グラブを空に突き上げ、波打つスタンドを見渡す。マウンド上の歓喜の輪にも駆け寄らず数秒間、余韻に浸った。

 「去年は優勝させてもらった感が強かったけど、今年は自分たちの代で勝ち取れてよかった」

 それでもすぐに我に返る。一塁線に落ちた帽子を拾いに向かうと、かなり遅れて仲間が待つマウンドへ。「みんなが駆け寄ったのを見て、よかったなあと思った」。感情を爆発させたくなる状況でも最後まで冷静だった。

 公式戦初の連投だった。直球は140キロ台前半が多く、最速は145キロ。四回は3安打を浴びて2点を先制された。それでも動じない。「甲子園が力以上のモノを出してくれた」。四回に同点に追い付くとギアを上げ、五回以降は三塁を踏ませなかった。

 西谷監督は「試合前に調子はどうだ?と聞いたら『昨日と同じぐらいです』と言うんです。全然そうじゃないのに、すごいなと思った」。幾多のプロ野球選手を育て上げた名将が舌を巻く精神力。二刀流としてのプレーに注目が集まるが、入学時からぶれない心を持っていた。

 入寮時、中学時代はトップレベルだった選手たちが集まり、小競り合いは日常茶飯事。それでも根尾だけはそこに加わらなかった。

 プレーでも同様だ。マウンドでは状況が悪くなると、自らタイムを取って靴ひもを結び直して間を取る。感情は表情に出ない。「マウンドさばき」は1年時から上級生にも模範とされた。気持ちをコントロールできることが、昨春センバツ決勝での“胴上げ投手”抜てきの理由だった。

 今大会は二刀流としても確かな進化を示した。西谷監督の方針で、1年時は遊撃の送球で肩肘を酷使しないように主に外野手としてプレー。この試合では八回の左前適時打を含む2安打で通算18打数9安打の打率5割、8打点。大切に育てられ、ようやく大舞台でも花を咲かせた。

 次は昨年、逃した夏の頂点を目指す。「明日から夏の山を登って、今度は春夏連覇をできるようにしたい」。春の感動は胸の奥へしまい、落ち着いた口調で先を見据えた。

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