松山商「夏将軍」復活だ 伝統校への期待背負い目指す17年ぶりの聖地
第100回の記念大会を迎える夏の甲子園。その節目の舞台を強く意識して練習に励んでいるのが愛媛の名門・松山商だ。過去に春夏合わせ7度の甲子園優勝を誇るが、ベスト4に入った2001年夏を最後に聖地からは遠ざかっている。「夏将軍」の復活を願うオールドファンの期待を感じながら、7月10日開幕の愛媛大会に乗り込む。
伝統の重みと緊張感が漂う松山商グラウンド。夏の大会に向けて総仕上げの段階に入ったナインの気迫あふれる声が響いている。バックネット裏には「第百回記念大会出場」の力強い文字。選手たちが新チーム結成時に掲げた今年の目標だ。
就任9年目の重沢和史監督は言う。
「今の3年生が入学したときから、この100回大会を意識してきました。松商が出ることを多くの方々に期待してもらっている。それを意気に感じて戦いたいと思います」
春夏合わせ甲子園に42回出場。春2回、夏5回の優勝を誇る全国屈指の名門校は、特に夏の甲子園で強さを発揮したことから「夏将軍」の異名も持つ。69年の決勝・三沢(青森)戦での「延長18回引き分け再試合」や、96年の決勝・熊本工戦での「奇跡のバックホーム」など、松山商は高校野球史を語る上で欠かせない数々のドラマを演じてきた。
そんな強豪も、2001年夏を最後に聖地から遠ざかっている。現役の選手たちは松山商の栄光を過去の映像でしか知らない。ただ、今も毎日のようにグラウンドに通う熱心なオールドファンは多い。主将の桧垣翔内野手(3年)は「みなさんから『甲子園には松商が出んといかん』と言っていただきます。自分たちが100回大会に出て、恩返しをしたい」と力強く誓った。
今年のチームは「投打のバランスが良くて、クリーンアップは例年になく長打力がある」と重沢監督。投手陣は入川翔投手(3年)と奥野慎也投手(3年)の二枚が安定。打線も高校通算13本塁打の山内敬太捕手(3年)を中心に、大村玄外野手(2年)、佐藤勇斗内野手(2年)らパワフルな打者が並ぶ。
春の大会は1回戦で宇和・北宇和・三瓶の連合チームに3-6で敗れた。山内は「力不足を痛感した。なんで負けたのか、すごく考えた」と振り返る。全員で話し合って出した答えは「当たり前のことが当たり前にできていなかったということ」。夏に向け、送りバントや捕球動作、声の連係など、松商野球の「基本」を徹底的に磨いてきた。
愛媛大会初戦の相手は宇和に決定した。「粘り強く、勝てるピッチングをしたい」とエース・入川。重沢監督は「足を絡めて攻撃的に行く」と力強く語った。伝統の堅守にパワーを加え、目指すは17年ぶりの甲子園。愛媛の夏に、強い「夏将軍」は欠かせない。