呉宮原15点コールド発進「勇気と元気を」豪雨被害で10日遅れの広島大会開幕
「高校野球広島大会・1回戦、呉宮原15-0音戸・大柿」(17日、呉市二河野球場)
広島大会が17日、西日本豪雨の影響で当初の予定より10日遅れで開幕した。甚大な被害を受けた呉市にある呉宮原は、15-0で音戸・大柿を五回コールドで下した。被災した部員もおり、豪雨以降初めてこの日チームメートが全員集合した。合言葉は「地域の人に勇気と元気を」。微力でも復興を目指して懸命な日々を送る人々の支えになることを目指す。
試合が終わり、本塁前へ整列した呉宮原ナインは、音戸・大柿の選手と握手を交わすと白い歯をこぼした。大きな災害を経験しながらもたどり着いた初戦。「一回からしっかりと試合に入り、相手に流れを渡さない戦いができました」と宮下太輔監督(29)。青空の下で、野球ができる喜びを胸いっぱいに感じながら戦った1時間18分だった。
初回、主将の藤原大輔投手(3年)の大会1号となる右越えランニング本塁打などで2点を先取。二回以降も猛攻を仕掛け三回までに15得点した。投げては藤原主将が3回を完全投球するなど3投手による無失点リレー。五回コールド勝ちで初戦を突破した。
6日から西日本を襲った豪雨は、呉市に大きな被害をもたらした。浸水被害は至る場所で起こり、土砂崩れにより呉宮原の生徒1人が亡くなった。呉市の中でも被害が大きかった安浦地区に住む迫越智哉内野手(3年)は自宅が浸水。「1階が自分の膝くらいまで水につかりました」。野球道具などを抱え、家族そろって2階に避難。翌7日の朝にボートで救出され、近くの集会所に身を寄せた。
交通網の寸断や断水で生活は一変した。野球部が全体練習を再開したのは大会4日前の13日。JR呉線の不通などで、集まった部員は26人中20人程度だった。被災当初は野球をしている場合ではないという考えだったが、藤原主将はボランティアとして泥だしの手伝いをした場所で地域の人に声を掛けられ、前を向くことができた。ナインも練習をするうちに思いが変化。合言葉は「地域の人に勇気と元気を」になった。
対戦した音戸・大柿も断水などの被害があった。藤原主将は「呉地区同士。彼らの思いも背負って次の試合を戦う。(被災した人たちを)勇気づけられるように頑張りたい」と力を込めた。被災地から仲間とともに歩む。特別な思いを抱いた呉宮原の夏が始まった。