松井秀喜氏 ワンバン始球式「魔物に襲われた」“甲子園凱旋”星稜開幕星導いた

 「第100回全国高校野球選手権・1回戦、藤蔭4-9星稜」(5日、甲子園球場)

 100回目の夏を迎えた甲子園が開幕した。「レジェンド始球式」の1人目として、巨人やヤンキースなどで活躍した星稜OBの松井秀喜氏(44)が開幕戦の藤蔭-星稜前に登場。星稜ナインをバックに投じた1球はワンバウンドとなり「甲子園の魔物に襲われた」と照れ笑いを浮かべた。大先輩の“甲子園凱旋”に後輩も奮起。来秋ドラフト候補の奥川恭伸投手(2年)は150キロをマークする熱投で8回4失点。4年ぶりの勝利に導いた。

 思わず両手で頭を抱えた。聖地で数々のドラマを見せてきた松井氏が、記念すべき100回大会のマウンドへ。後輩たちがバックから見つめる中、ノーワインドアップから投じた1球は、なんと外角のワンバウンドボール。照れくさそうに笑うと、超満員の客席から万雷の拍手が注がれた。

 「甲子園の魔物に襲われた」。冗談交じりに振り返る言葉が松井氏らしいが、これ以上ない舞台での大役だった。自身が始球式を務める開幕戦で母校が試合をする奇跡的な巡り合わせに。「誰か仕組んだんじゃないかと(笑)」。野球の神様がもたらした粋な演出に驚きを隠せなかった。

 感じる空気は“あの時”のままだ。「(雰囲気は)自分が出ていた時と変わらない」。1年夏から春夏通算4度の甲子園出場を果たし、1992年の3年夏には2回戦・明徳義塾戦で5打席連続敬遠。「(甲子園は)原点です。高校野球で甲子園というのは私の憧れでしたから」。野球人としての礎を築いてくれた場所だと改めてかみしめる。

 自身の1年後輩で三遊間を組んでいた林和成監督(43)には4日に電話で激励したという。「始球式と切り離して。私が行くからといってね、関係なく普段通りの野球をと」。始球式直後には先発の奥川に声をかけて勇気づけた。

 その後はスタンドから後輩たちの一挙手一投足を、優しい視線で追いかけた。母校は11安打9得点で快勝。林監督は「松井さんの始球式もあって、この上ない舞台でできて幸せに思います」と感慨深げだった。

 勝利の校歌も歌った松井氏。「自分たちが着たものと全く同じ黄色いユニホームを着てプレーする後輩たちを見られて、しかも、勝って一緒に校歌まで歌うことができて、これ以上ない一日になりました」。後輩たちと記した新たな歴史の1ページ。かつての聖地の申し子が記念大会初日を明るく晴れやかに彩った。

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