史上初タイブレーク実現 佐久長聖、本格的な対策なしも“普段着野球”で劇勝
「第100回全国高校野球選手権・1回戦、佐久長聖5-4旭川大高」(6日、甲子園球場)
100回大会を迎えた夏の甲子園に、新たな歴史が刻まれた。第4試合で行われた1回戦の佐久長聖(長野)-旭川大高(北北海道)戦は延長十二回を終えても4-4のまま決着がつかず、春夏の大会を通じて初めてとなるタイブレークを実施。佐久長聖が十四回表に奪った1点のリードを守り切って、3時間7分の激闘に勝利した。
延長十二回裏、旭川大高の攻撃が無得点に終わる。照明に照らされた甲子園に「延長十二回を終え、タイブレークに入ります」とアナウンスが流れると、すでに少なくなっていた観衆からどよめきが起こった。
今春から導入後、初のタイブレーク実施。延長十三回無死一、二塁から始まる佐久長聖の攻撃では、いきなり送りバントを失敗し、無得点に終わった。だが、その裏を無失点で切り抜け、迎えた十四回。母校であるPL学園を指揮した経験を持つ藤原弘介監督(44)はあくまで普段通りに攻めた。
「簡単には点が取れない。迷うところはあったけれども、早めに点を取って相手にプレッシャーをかけよう」。選択したのは、再び送りバントだった。
サインを受けた真銅龍平外野手(3年)も冷静だった。「二塁走者の足が速くなかったので、サードに捕らせようと思った」。狙い通り三塁線に転がすと、相手が触らぬままフェアゾーンに打球が止まった。無死満塁。続く2番・上田勇斗内野手(3年)の二ゴロ併殺崩れの間に三塁走者がホームイン。形はどうあれ、泥くさく決勝点をつかみ取った。
藤原監督自身は3年前の春に長野大会準々決勝・長野商戦でタイブレークの経験があったものの、本格的な対策は取り入れずに今夏へ臨んだ。強いて挙げれば、ケース打撃で無死一、二塁を想定した練習をした程度。「準備不足ではありました」と認めながら、県勢60勝を喜んだ。
3番手で登板した背番号18の北畑玲央投手(2年)は八回から登板。7回1失点で、タイブレークでは点を与えなかった。「レギュラーだけでなく、2桁の番号の選手も頼もしい」と選手をねぎらった指揮官。ナイン全員の力が結集した歴史的な1勝となった。