日南学園・奥野 病室の母に贈る一打 好機演出先制ホーム
「第100回全国高校野球選手権・1回戦、日南学園2-0丸亀城西」(8日、甲子園球場)
病室の母に贈る一打だった。0-0の三回。日南学園の先頭、奥野竜也外野手が打線に火をつけた。左翼線を破る二塁打で出塁し、中原の中前打で生還。九回も左前打を放った7番打者はある言葉を思い出した。
「試合に集中しました。いつもお母さんに『目の前のことに集中して』と言われてきたので」。胸にあったのは、がんで6年間の闘病生活を送る母・ゆかりさん(54)の言葉。宮崎大会中に容体が急変し、一時は危篤状態に陥った。
母の「野球に集中してほしい」という希望もあり、奥野に病状が伝えられたのは宮崎大会決勝の後。翌日、宮崎県都城市内の病院に駆けつけ、準決勝の富島戦で打った本塁打のボールを届けた。
「甲子園で暴れてくるね」と誓った息子の思いが届いたのか、母は奇跡的な回復を見せ、今では一般病棟に移るほどに。母は午前中の試合をテレビ観戦した後、手術に臨んだ。アルプススタンドに駆け付けた父・豊一朗さん(46)も30年前に宮崎南で甲子園出場。「(病状は)いい方に向かっています。病気と野球。家族全員で戦っています」。息子の活躍を見届けると、病院へ戻った。