田中浩康「野球界の力になりたい」 現役引退、将来的に指導者も視野に
一つの夢の終焉(しゅうえん)は新たな夢への一歩。「DeNAでの2年間は夢の続きを見させてもらった」。今季限りでの現役引退を決めた田中浩康内野手(36)は11月のファンフェスティバルで支えてくれたファンへ感謝の言葉を残し、14年間のプロ生活に別れを告げた。
ヤクルト時代は打線の貴重なつなぎ役を果たした。DeNA移籍後はバックアッププレーヤーとして、そして今季はラミレス監督からダッグアウトキャプテンの肩書を与えられ、陰からチームを支えた。
「レギュラーとしての時間も経験したが、バックアップに回った後の時間は濃かった。自分が思っていた以上に自分のプロ野球人生を楽しめたと思う」
球団からの戦力外通告に現役続行への思いもあった。だが「正直、やりたかった。でも自然とそう(引退決意に)なりましたね」と思いを明かす。
16年に戦力外通告を受けた際はコーチ就任要請を断りヤクルトを退団。2年後、同じ状況下で現役に区切りをつけたのは、そこに充足感があったからだ。
田中浩は何度も感謝の言葉を口にした。プロ入りのきっかけを与えてくれたヤクルトに、夢の続きを見せてくれたDeNAに。だからこそ印象に残る試合に移籍1年目の昨季の開幕戦を挙げる。
神宮球場でのヤクルト戦。スタメン出場の田中浩は二回の打席で左越えの安打を放つ。「両チームのファンから、あれだけの声援を受けたのは初めて。感慨深かった」という。
今後も野球人としての道は続く。だから安易に「恩返し」の言葉を使わない。「野球界の力になるための経験を積みたい。みんなの努力で野球は魅力あるものであり続けている。そこの力になるために」。将来的な指導者も視野に、学生野球資格回復の研修も受講。田中浩の夢の続きは、まだ終わらない。
◆田中浩康(たなか・ひろやす)1982年5月24日生まれ、36歳。京都府出身。177センチ、77キロ。右投げ右打ち。内野手。尽誠学園から早大を経て、2004年度ドラフト自由枠でヤクルト入団。05年4月6日・中日戦(神宮)でプロ初出場(代走)。17年DeNA移籍。ベストナイン2回(07・12年)、ゴールデングラブ賞(12年)。通算成績は1292試合1018安打31本塁打351打点、打率・266。