ロッテ・岡田、守備を武器に育成からはい上がった経験伝える
【第2の人生へプレーボール】
生まれ育った栃木を愛する岡田らしい再出発となった。BCリーグ・栃木で外野守備走塁コーチとして、指導に当たる。ロッテから1年間の“出向”である。
球団から告げられたのは10月4日で、その4日後に引退試合が行われた。最初は「エッ」と戸惑ったが、将来を見据えた武者修行の色彩もある。
「ありがたい話だと思いました。感謝です。やれることしかできないが、(10年間)いろんな方に教わり、僕なりの考えもある。しっかり伝えたい」
全足利クラブでの活躍が認められ、08年度育成ドラフト6位でロッテに入団。翌09年の3月に支配下登録された。俊足を生かしたその広い守備は「エリア66」と呼ばれ、11、12年にゴールデン・グラブ賞を獲得した。最大の武器である守備で、チーム内での居場所をつかんだ。
10月8日の引退試合は伝説となった。59打席連続無安打は野手のプロ野球ワーストとなったが、60打席目で安打が出るとポン、ポンと3安打の猛打賞だ。今、つくづく思う。
「ヒットが打てないと焦りが出る。それが1本出たら気持ちが楽になった。悩んでいたのは何だったのかと思いました」
全2501打席で本塁打なし。野球の華とは無縁だったが、これこそ岡田がプロで生き抜いた勲章だ。「僕が本塁打をいっぱい打てるような打者だったら、(守備に)興味がなかったと思う」。守備の向上については「(打球の行方を)予測することが大事です」と話し、こう強調した。
「一番いいのは一番多く打球を捕ること。練習中のフリー打撃の打球を数多く捕った。いろんな発見がある」
外野守備走塁コーチとして、選手たちに基本練習の大事さとともに、練習を通じて何かを発見する。そんな姿勢を伝えたいと願う。
つい最近、中学校で「諦めないこと」をテーマに講演した。育成からプロでの活躍を諦めずに一時代を築いた岡田が、指導者として地元で新たな一歩を踏み出す。
◆岡田 幸文(おかだ・ゆきふみ)1984年7月6日生まれ、34歳。栃木県出身。177センチ、70キロ。左投げ左打ち。外野手。作新学院から日大中退、全足利クラブを経て、2008年度育成ドラフト6位でロッテ入団。09年支配下登録。10年6月1日・巨人戦(千葉マリン)でプロ初出場。デビューからの全2501打席連続無本塁打はプロ野球記録。ゴールデン・グラブ賞2回(11~12年)。通算成績は910試合出場で打率・255、0本塁打、119打点。