長野移籍で見えた広島、巨人の思惑 開幕戦で激突する両軍に与える影響
意外な展開だった。7日、FAで巨人入りした丸佳浩外野手の人的補償に伴い、長野久義外野手の広島移籍が決定した。巨人に相次ぐ生え抜きスターの流出と、育成に重きを置いていた広島のベテラン獲得。ふたつの衝撃に、野球ファンが多くの関心を示した。
ただ、今回の移籍には両球団の思惑、狙いがはっきりと見えた。FAに伴う人的補償制度。リスト提出前、当該の球団間には“駆け引き”が生じる。今回、広島・鈴木清明球団本部長は丸の移籍が決まった11月30日、人的補償について言及。「いい選手がいたら取りにいく。(年俸が)高くてもいく可能性がある」と話していた。結果的に、この発言に“裏”はなかった。
プロテクトする側は自軍の事情と相手チームの戦力や方針を見定めたうえで、28人を固めていくもの。13年オフ、大竹の人的補償で広島へ移籍した一岡が大化け。この痛みもあって、巨人は若手中心に28人の枠を埋めていた。
“読み”もあった。昨オフ巨人を自由契約となった村田修一氏の獲得が見送られたように、近年は球界全体で世代交代を進める風潮がある。特に広島には限られた資金力のなかで、選手を育成していくイメージも強い。大塚淳弘球団副代表が「まさかベテランを獲るとは。右の代打もあるかもしれないですけど、難しいですね」と漏らしたように、推定年俸2億2000万円の長野は対象にならないだろうと、思い切って枠から外した。
その一方で広島は3連覇を支えた黒田、新井が抜け、チームに好影響をもたらすベテランの存在を必要としていた。「新井も輝きを取り戻したように、彼もそうなってもらいたい」と鈴木本部長。外野陣は丸が抜けても主砲の鈴木、野間、松山、西川ら人材は豊富。それでも、4連覇、日本一を狙う来季を見据え、貴重な経験値がプラスになると長野の獲得に踏み切った。
ただ、リーグ制覇、日本一への思いは巨人も同じだ。相次ぐ生え抜きの流出に批判の声もあるが、チームの野手では坂本や岡本が軸として存在。長野は近年、故障や不調に苦しみ、シーズンを通して能力を出し切れていない現実もあった。山口オーナーは「なんとも痛いですよね」としながら、「ルールだから仕方がないと思うんですよ」と、流出覚悟の思いもにじんだ。名門再建へ、チームに緊張感が生まれ、各選手に危機感が生まれるのは間違いない。
来季、広島と巨人は開幕戦で激突。今回の移籍が両球団にどう影響を与えるのか。注目が高まりそうだ。