元プロ野球選手夫婦は“すれ違い”でも心は一つ 同じ学校の男女野球部を指導
広島市のMSH医療専門学校男子野球部の野手総合コーチを務める鈴木将光さん(31)と、同校女子野球部監督の野々村(鈴木)聡子さん(31)は、2人が元プロ野球選手という夫婦だ。
鈴木さんは2005年度高校生ドラフト1位で広島に外野手として入団。15年オフに戦力外通告を受けた。10年間で通算2安打のプロ生活を「ケガに始まってケガに終わったんで悔いが残っています」と振り返った。第二の人生は「体について勉強しようかなと思った」と16年春から鍼灸(しんきゅう)師を目指し、専門学校の夜間課程に入学した。
野々村監督は日本女子プロ野球機構初年度の10年から兵庫で2年間プレー。退団後はMSH医療専門学校に入学し柔道整復師の資格を取得するとともに、女子硬式野球部設立に尽力した。卒業後は同校の教壇に立ちながら初代監督として指揮を執っている。
2人は鈴木さんが現役時代の14年から交際し、16年暮れに結婚。その縁もあって18年春から鈴木さんが男子野球部のコーチに就任した。夫婦そろって同じ学校の男女野球部を指導するが、鈴木さんは「練習場も違うし、一緒に教えているという感じはないです」と言う。2月に鍼灸師の国家試験があるため、午前中は自宅で勉強。午後から野球部の指導、そして夜は専門学校で授業を受け、帰宅は午後10時を過ぎる。野々村監督は午前中は教壇に立ち、午後は野球部の指導、夜は勉学に励む夫の帰りを待つ“すれ違い生活”が続いている。
それでも2人は野球を通じて心を一つに結婚生活を送る。鈴木さんが「コーチングとか選手の性格などを聞く」と言えば、野々村監督は「NPBという頂点で野球をしてきた人なので、野球全般的に聞きます。教え方や技術的なことなど」と言う。将来について鈴木さんは「最終的には治療院を出して野球塾を開きたい。オフはプロ野球選手の練習も手伝いたい」と語った。そばで野々村監督は「柔道整復師の資格もありますし、主人を手伝えたらいい。女子野球にも携わっていけたらと思います」。現役生活を終えても夫婦で野球を追い掛ける人生は、楽しそうだった。(デイリースポーツ・岩本 隆)