呉、開幕星ならず…エース沼田、被災地に勇気与える150球粘投も11回に力尽きる
「選抜高校野球・1回戦、市和歌山3-2呉」(23日、甲子園球場)
呉は、初出場した17年に続いて開幕カードを戦い、延長十一回にサヨナラ負け。出場2大会連続での初戦突破は果たせなかった。敗れたものの、先発した沼田仁投手(3年)は11安打を浴びながらも10回2/3を3失点(自責点2)。粘りの投球が光った。大きな経験を糧に、エースは今夏の甲子園出場に向けて再び歩み始める。
九回に味方打線が追い付き延長戦へ。「まだあのマウンドで投げられる」。沼田仁は疲れが吹き飛び、さらに大きなエネルギーが生まれた。最後は2-2の延長十一回2死二塁からサヨナラ負け。それでも「力は出せた」。悔いのない150球に胸を張った。
130キロ台前半の直球とスライダーが軸。制球が狂えば大量失点してもおかしくないピンチで踏ん張った。失点した回はいずれも最少失点で切り抜けた。磨いてきた制球力が、初めての大舞台でキラリと光った。
「応援してくれている人がたくさんいると知った。全力プレーをして恩返しがしたかった」。昨夏、呉市は西日本豪雨で甚大な被害を受けた。練習がままならない状況の中、ナインには周辺住民からおにぎりなど食料品の差し入れがあった。
被災現場に足を運び土砂運びなどのボランティア活動を行った際には「頑張れと励ましてもらった」。特別な大会。勝利こそ届けられなかったが、ひたむきな姿は呉に元気を届けたに違いない。
「勝つためには、直球の球威や変化球の精度をもっと上げていかないといけない」。沼田仁は課題を挙げた。地域の人の思いも背負ってグラウンドに立つ。最高の夏にするために、この敗戦を無駄にはしない。