盛岡大付・大谷投手、亡き母に捧げた全力投球 昨年9月他界、女手一つで育ててくれた

 「選抜高校野球・2回戦、龍谷大平安9-1盛岡大付」(29日、甲子園球場)

 空を見上げ、心の中でつぶやいた。「見ておいて」。盛岡大付(岩手)・大谷智琢投手(3年)は天国の母を思い、マウンドへ。昨年9月に母・美希子さんが肝臓の病気のため死去。小学3年からは3人きょうだいを女手一つで育ててくれた感謝の思いを胸に腕を振った。

 中学1年の頃、入退院を繰り返す母の姿に、プロ野球選手になって恩返ししたいという思いが芽生えた。関口清治監督(42)から誘われ、東北の強豪への進学を決意。家を離れる際に一緒に住んでいた祖父母からは「一応覚悟はしといて」と伝えられていた。

 野球を始めた時からどんなに遠い場所でも送迎し、応援してくれた。最後に会ったのは、亡くなる約1カ月前。地元・群馬での練習試合で、久々に投げる姿を見せられた。だが失点。病と戦う母を喜ばすことはできず、逆に「何、点を取られているの」と励ましを受けた。

 成長の跡を見せたい。そう誓った聖地のマウンド。出番は八回1死二塁で巡ってきた。先頭を抑えながら、続く打者に痛打を浴びて走者の生還を許す。智琢は思わず天を仰いだ。

 高校入学前に贈られたグラブは母の死後、寮の部屋に飾った。物を大事にしなさいという教えを守って使い込んだ形見を目にするたび、「頑張らないとなという思いになりますね」。夏こそ無失点に抑える姿を届ける。

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