逆転の習志野 桜井公式戦初アーチがV弾 サイン盗み騒動もはねのける
「選抜高校野球・準決勝、習志野6-4明豊」(2日、甲子園球場)
習志野(千葉)が明豊を破り、初の決勝進出を果たした。3-3の八回、桜井亨佑内野手(2年)が右翼席へ自身初の公式戦アーチを放ち、勝負を決した。決勝の相手は明石商を下した東邦。千葉勢初、そして2009年・清峰(長崎)以来となる公立校のセンバツ優勝へあと1勝。サイン盗み疑惑で揺れた習志野ナインが雑音をはねのけ、紫紺の優勝旗をつかむ。3日の決勝は午後0時半プレーボールの予定。
逆風を切り裂いた。八回、先頭での打席。桜井が真ん中高めを振り抜く。見逃せばボール球。「体が反応してうまく捉えられた」。打ち抜かれた白球は右翼席へ。公式戦初アーチは人生初の決勝弾。一塁アルプスからの“美爆音”を背に、「信じられないというか、実感が湧かない」と夢心地でダイヤモンドを一周した。
小学生の時から憧れた舞台で大仕事をやってのけた。三回2死二塁では一、二塁間を破り、1点差に迫る適時打で今大会初打点をマーク。「少し楽になった部分がある」と勢いに乗り、豪快な一撃へとつなげた。
相棒は肌身離さず側に置いている。小4の時、初めて買ってもらったバットを手に抱えてふとんに入ったのが始まり。そして小6時にプレーしたマリーンズジュニアで、当時の武藤一邦監督(60)からの「どんなに時間がなくてもバットは触っておけ」というアドバイスが心に響いた。
以来、スイングできなくてもバットだけは握っている。高校では「他の人に抜かされる」と危機感を抱き、朝5時30分に起きて自主練でバットを振った。とにかくバットに触れた時間なら誰にも負けない自信があった。
主砲の一発で決めた習志野だが、三回には重盗を仕掛けて成功するなど泥くさい野球は変わらない。星稜との2回戦でサイン盗み疑惑が浮上。大騒動に発展した中でも、ナインは平常心を保ち続けて勝ち上がってきた。
「あの子たちの、(サイン盗みと)言われていることに対しての(していないという)自信なんじゃないですかね。言われていることはしていないので。自分たちができることをやろうよと(選手に言っている)。(この日もプレーは)変わらなかった」。小林徹監督(56)の目にも頼もしく映る。初戦以外はすべて逆転勝利。劣勢でも粘り強く、接戦を制してきた。最後の大一番でも普段通りのプレーで頂点を目指す。