大船渡・佐々木163キロ封印 将来見据え決断 球速140キロも手応え39球
「春季高校野球岩手大会・沿岸南地区予選2回戦、大船渡17-2住田」(3日、平田運動公園野球場)
壮大な目標を掲げ、成長の一途をたどる。最速163キロ右腕の大船渡・佐々木朗希投手(3年)が3日、今年初の公式戦に先発。3回1安打無失点4奪三振で地区代表権の獲得に貢献した。球速は米球団スカウトの計測で87マイル(約140キロ)。剛速球を見せない投球の裏には、将来を見据えた育成プランがあった。
佐々木は“令和初投げ”で剛速球を使わずに抑えた。「4、5割程度」の直球は自己最速より20キロ以上遅い。配球とカーブ、チェンジアップで緩急をつけながら「少しずつ自分の引き出しを作れたかな」と手応えの39球を投げ込んだ。
投球の幅を広げつつあるエースに国保陽平監督(32)も納得の表情を浮かべた。4月中旬に佐々木の骨密度を測定。「まだ大人の骨ではない。骨、筋肉、じん帯、関節が耐え得る体ではない」と160キロ超の速球を投げる負担を考慮し、変化球主体で挑ませた。
無限の可能性を最大限に引き出すため最適な育成方法を、佐々木と話し合いながら決断している。根底にあるのは「ロング・ターム・アスリート・ディベロップメント(LTAD)」という育成プログラム。25~30歳の選手として脂が乗る時期に、選手として最高のパフォーマンスを。本人の意思を尊重し、高校1年の頃から段階を一歩ずつ踏んでいる。
プログラム上、今は無理をする時期ではない。指揮官は筑波大時代からの付き合いであるベースボール&スポーツクリニックの馬見塚尚孝医師(51)から助言を受け、右腕の長期的な成長を後押し。“令和の怪物”は指導者らの厚いサポートで実力を伸ばし、焦ることなく、今夏の甲子園出場もかなえてみせる。