宇和島東・土居「スポーツ貧血」に負けない 来夏こそ甲子園マウンドへ!
「全国高校野球選手権・2回戦、宇部鴻城7-3宇和島東」(12日、甲子園球場)
宇和島東(愛媛)は、宇部鴻城(山口)に敗れ、21年ぶりの勝利はならなかった。先発のエース右腕・船田清志投手(2年)が6回を投げ6失点。打線は兵頭仁内野手(3年)が左中間ソロ本塁打を放つなど13安打を放ったが、チャンスであと1本が出ず3得点に終わった。それでも9年ぶりの聖地で強豪復活を印象づけ、アルプスの応援団を沸かせた。
◇ ◇
「この空気の中で投げてこい」。長滝剛監督(39)に言われ、宇和島東・土居毅人投手(2年)は一塁側ブルペンで精いっぱい投げてきた。登板はできなかったが、雰囲気を肌で感じた。感想を聞かれ、懸命に絞りだそうとするも、言葉が詰まる。瞳を潤ませた長い沈黙が、思いの強さを物語った。
小学校高学年で突然「スポーツ貧血」になった。成長期に激しい運動をし過ぎたため、全身に運ばれる酸素が減少する病気だ。
母・珠美さん(44)は高校入学後も、赤肉やほうれん草を使った料理などで体調管理に気を配ってくれている。だが、愛媛大会は貧血で登板機会がなかった。この日も登板予定はなし。「家族に投げないことを話したら、頑張れと言ってくれた」と温かな励ましを受けて球場に向かった。
兄はプロ野球ロッテの土居豪人投手。松山聖陵高では甲子園にも出場した。兄弟そろっての大舞台出場に父・陽輔さん(43)も笑顔で「兄弟で別々の学校で甲子園に出るのはなかなかない。うれしい」と目を細めて見守った。
悔しい中にも青春の輝きはあった。「厳しいけど、楽しくないとここまでこられない。甲子園に来られて良かった」。長い夏は幕を下ろしたが、まだ2年生。もう一度季節は巡る。憧れの甲子園の土は踏めた。来夏はマウンドの中心に立つ。