“甲子園の魔物”正体は?今大会でも勝敗を分けるイレギュラー、まさかの落球も…
熱戦が繰り広げられている夏の甲子園。101回を数える大会で、いつからか「甲子園には魔物が住む」と言われるようになった。甲子園歴史館にも“魔物”に関する資料はないというが、夏の甲子園を主催する朝日新聞は1975年8月13日付けの紙面で「魔物甲子園」の見出しを付け、記事を掲載。ミスや逆転が目立った大会で、甲子園で普段通りのプレーをする難しさを伝えている。
“魔物”の正体は何か。ひとつは屋外球場ならではの環境面が挙げられる。特有の浜風が吹くことでフライの捕球は難易度が増し、土のグラウンドで最大4試合行われることで荒れた状態にもなり、当然イレギュラーが起こる確率も高まる。
今大会では高岡商(富山)が2回戦の神村学園(鹿児島)との戦いで勝利目前の九回2死に平凡な二飛をまさかの落球。1点差まで迫られ、肝を冷やした。智弁和歌山(和歌山)は同じく2回戦の明徳義塾(高知)戦で遊ゴロ併殺かと思われた打球が大きくイレギュラー。ラッキーな一打から流れをつかみ、逆転勝利をおさめた。
大舞台でプレーする球児の心理面も、勝敗の行方を左右する。箕島(和歌山)の監督として春3回、夏1回の優勝経験を持つ尾藤公氏はデイリースポーツに掲載された連載で、“魔物”について言及。1978年、選抜の準決勝・福井商との一戦で大観衆の雰囲気に飲まれてミスを連発。敗戦した際に「これが甲子園の魔物か」と初めて思ったことを回想している。
夏は3年生にとって負ければ引退となる戦い。さらにプレッシャーも増す。2016年の98回大会では八戸学院光星(青森)が東邦(愛知)との戦いで、九回に5点を奪われて逆転サヨナラ負け。大観衆が東邦の応援に合わせてタオルを振り回す異様な雰囲気となり、八戸学院光星のエース桜井一樹投手は「全員が敵なんだなと思いました」とのコメントを残した。
今大会、八戸学院光星は2回戦の智弁学園(奈良)戦で、最大6点リードを逆転される嫌な展開となったが、再逆転に成功。壁を乗り越え、16強進出を果たしている。
16日からは、8強入りをかけた3回戦に突入する。実力伯仲の戦いでいかに本来のプレーを貫き、流れをつかめるか。“魔物”との戦いも、勝ち進むための重要な要素となりそうだ。
【16強の対戦カード】
▽16日
岡山学芸館(岡山)-作新学院(栃木)
東海大相模(神奈川)-中京学院大中京(岐阜)
明石商(兵庫)-宇部鴻城(山口)
海星(長崎)-八戸学院光星(青森)
▽17日
高岡商(富山)-履正社(大阪)
星稜(石川)-智弁和歌山(和歌山)
敦賀気比(福井)-仙台育英(宮城)
鶴岡東(山形)-関東一(東東京)