智弁和歌山・中谷監督 星稜・奥川に脱帽「田中将大のようだった」
「全国高校野球選手権・3回戦、星稜4-1智弁和歌山」(17日、甲子園球場)
3回戦4試合が行われ、8強が出そろった。智弁和歌山が星稜に延長十四回タイブレークの末にサヨナラ負けし、08年以来11年ぶりの準々決勝進出を逃した。智弁和歌山・中谷仁監督(40)は奥川に23三振を奪われ、脱帽。履正社はドラフト候補の井上広大外野手(3年)が2ランを含む2安打5打点で同校初の夏8強に貢献。仙台育英、関東第一もそれぞれベスト8に進んだ。
甲子園に渦巻く大歓声は、無情にも激闘のフィナーレを告げるサイレンとなった。中谷監督はグラウンド上でうずくまる教え子たちを見つめ、こみ上げてくる悔しい思いを心の扉に押し込んだ。奥川の前になすすべなく封じられ、最後は壮絶なサヨナラ負けで就任以来初の夏が終わった。
「(前監督の)高嶋さんだったらこのまま優勝まで持っていくのかな…。悔しいです」
延長十四回。無死一、二塁から始まるタイブレークで十三回に続き先頭の送りバントを阻止したが、次打者・福本に左中間席へサヨナラ3ランを浴びた。一方で攻撃でも「奥川君から連打は難しい」と2イニング連続で送りバントを試みたが、2度の失敗が敗戦に直結した。
強力打線が奥川に圧倒され、喫した三振は23個。指揮官は「田中将大のように見えました。ここ一番で力を出せて、楽しみながら投げていたように思います」と楽天時代の同僚で、現ヤンキースの田中と姿を重ね合わせる。
2回戦終了後からデータ解析に10時間以上かけ、右腕を研究してきたが「想像を上回るピッチングをされてしまいました」と165球の力投に脱帽するしかない。それでも、大事な「後輩であり教え子」と言うナインはフェアプレーを貫き、死力を尽くして戦った。
延長十一回に右ふくらはぎがつってしまった奥川に対し、黒川史陽内野手(3年)が星稜・内山を通じて熱中症対策の漢方を右腕の元に届けたという。黒川と奥川は今春の高校日本代表候補合宿で共に汗を流した間柄。敵と味方の垣根を越え、友情の手を差し伸べていた。
悔しさと同時に選手の成長を実感した初めての夏。「これをどう生かすか。ここからの人生の方が長いから」。指揮官は柔和な表情を浮かべ、コーチ時代からの“同期”である3年生を送り出した。