奥川V王手 7回0封10K、打ってもダメ押し初H 星稜24年ぶり決勝!
「全国高校野球選手権・準決勝、星稜9-0中京学院大中京」(20日、甲子園球場)
伝説のフィナーレへ、自ら舞台を整えた。星稜(石川)が準優勝した1995年以来2度目の決勝進出を決めた。先発志願した今秋ドラフト1位候補・奥川恭伸投手(3年)は87球を投げ7回2安打無失点10奪三振、打っては今大会初安打となる2点適時二塁打の活躍を見せた。休養日を挟んで行われる22日の決勝は今春センバツで完封した履正社との再戦。ここまで自責点0の右腕が悲願の日本一へ最後のマウンドに挑む。
休みは1試合あれば十分だ。圧倒してのファイナル進出は、やはりエースがいてこそのもの。「ここまで来たら投げたいですし、そこは他のピッチャーに譲らずに上がりました」。87球に見えたプライド。奥川の快投で日本一に王手をかけた。
「(相手の)ビデオを見て、腕を“マン振り”して速い球を続けるより緩急を付けた方が有効じゃないかという話をしていたので」
この日は最速153キロで10三振を奪ったが「(投球スタイルは)だいぶ変わったかなと思います」と話す。相手打線に合わせて組み立てる投球術。巧みに変化球を交えて二塁すら踏ませない。7回無失点での降板後は「初めてです」という左翼の守備へ。バットでは6点リードの七回2死二、三塁から2点適時二塁打でダメ押しだ。
「絶対に打ちたいなと思ってました」と奥川。遅ればせながらの大会初安打だが、石川大会準決勝・鵬学園戦では同点弾と決勝弾の2打席連続アーチを記録。打力の向上は、努力の結実でもある。
センバツ後は「夏は自分も打たないと勝てないので」と打撃練習にも時間を割いた。学校での練習後には、自宅で素振りを繰り返した。父・隆さんが「今まで見たことなかったです」と驚いたほどで、投手でありながら手にマメを作るほどの振り込みも敢行。ひっそりと日本一への執念が積み重ねられていた。
前日の練習後、宿舎で林和成監督(44)から状態を問われて「投げたいです」と登板を志願。その後、休養で欠場した仙台育英戦で先発していた荻原吟哉投手(2年)と、2人で大浴場へ。何気ない会話の合間、荻原に背中を流してもらいながら「優勝しよう」と声を合わせた。みんなの思いは一つだ。
95年には決勝で帝京に1-3で敗れた星稜。それ以来の決勝では、石川県だけでなく北陸勢としての夏初優勝もかかる。「明後日も投げることになると思うので。(履正社は)春とは違ったチームだと思うので全力でぶつかっていきたい。(最後に)マウンドに集まりたい」。優勝投手のイメージは描けている。防御率0・00で優勝すれば金属バット導入後では初の快挙となる。伝説のフィナーレへ、歴史的な一戦へと向かう。