履正社 令和初代王者!悲願の初V 井上が奥川攻略3ラン!
「全国高校野球選手権・決勝、履正社5-3星稜」(22日、甲子園球場)
決勝戦が行われ、初の夏の決勝に挑んだ履正社(大阪)が、今大会ナンバーワン投手の星稜(石川)の奥川から11安打を放つ猛攻で、令和初の王者に輝いた。リードを許して迎えた三回、4番・井上広大外野手(3年)が高校通算49本目となる3ランを放ち逆転。主砲の一撃で勢いづいた打線はその後追い付かれるも、即座に突き放して逃げ切った。今春のセンバツで完封負けを喫した星稜に見事リベンジを果たし春夏通じて初めての日本一となった履正社が、新たな歴史に名を刻んだ。
待ちわびた勝利の瞬間。目を赤くした主砲は仲間の元へ勢いよく駆け出した。「本当に…うれしいです」。井上は共に戦った仲間と肩を抱き合い、喜びを分かち合った。
新時代を迎えた第101回大会。今大会防御率0・00のナンバーワン投手・奥川を打ち崩した履正社が令和初、そして同校としても初の甲子園王者に輝いた。
1点を追う三回2死一、二塁。井上の読みが的中した。「前の打席で打ち取った球でくると思っていたので、狙っていました」。初回、高めのスライダーに反応できず見逃し三振。「次も絶対にくる」-。2打席目の初球、浮いてきたスライダーを完璧に捉え、バックスクリーン左へ逆転の一発を放り込んだ。
この日のために、やってきた。日本一を掲げて挑んだ今春のセンバツ大会1回戦で星稜と対戦した履正社は、奥川にわずか3安打、17三振を奪われ完封負け。4番を任された井上も4打数無安打2三振と完敗だった。
敗戦後「必ず、甲子園で借りを返そう」と誓ったチームは“打倒奥川”を目指し、徹底的に打撃を見直した。「奥川君が自分たちをここまで連れてきてくれた」と語っていた井上は、甲子園の決勝という最高の舞台で、奥川にリベンジを果たした。
勝利を呼び寄せた一発は、偶然ではなく積み上げてきた努力の証しだ。小6の頃に両親が離婚し、野球道具がそろわないこともあった。それでも文句一つ言わず、大好きな野球を続けてこられたのは、女手一つで育ててくれた母・貴美さん(50)の支えがあったからだ。今大会も全試合スタンドで息子を見守ってくれた母に「今までありがとうと伝えたいです」と照れ笑いした井上。
この日、一つの大きな夢はかなえたが井上の野球人生はまだこれからだ。「プロになって、また甲子園で野球がしたいです」。チームを初の頂点へ導いた主砲は、次なる夢に向かって新たなスタートを切った。