関大野球部アドバイザリースタッフ・山口高志氏 決勝舞台に「夢のよう」

 野球の明治神宮大会は20日、神宮球場で最終日が行われ、大学の部では慶大が関大に8-0で完勝。19年ぶり4度目の優勝を果たした。関大の47年ぶりとなる日本一はならなかった。バックネット裏では関大の当時のエース、山口高志氏(69)が見守っていた。16年から関大のアドバイザリースタッフとして投手陣を指導。思い入れの強い“同期”4年生の最後の勇姿を見届け、デイリースポーツに手記を寄せた。

  ◇  ◇

 いつだったか同じ光景を夢で見た。神宮球場のネット裏席から見つめる前で、関大が慶応と戦っている。

 「おんなじようなユニホームで分かりにくいなあ…」

 夢の中でそうつぶやいたことが現実になった。日本一は逃したとはいえ、今は選手たちに「ありがとう」と感謝したい。

 47年前は私のノーヒットノーランとサヨナラ打で慶応に勝った。当時は東京六大学から4校が出場しており、まずは慶応、次に早稲田、決勝で法政…と指折り数えたことを思い出す。関大へ入学したときから打倒関東、打倒東京六大学に燃えてきた。

 その思いは今も同じ。実はこの大会の組み合わせ表を見たときに「慶応と当たるのは…決勝か。やってみたいなあ」と思っていた。実際に慶応と対戦してみて感じたのは体の強さの違い。来年以降の課題にしたいね。

 今の4年生の入部と同時期に関大から指導者として声がかかった。いつか母校に恩返しをしたかったし、何より若い学生たちと一緒に野球ができることがうれしかった。

 選手たちに伝えてきたのは「限界の先に成長あり。妥協の先には後悔ばかり」ということ。この4年間でどれだけのことを教えられたかは分からない。ただ、故障者が出た中でもチーム一丸となってリーグ戦を制し、神宮の決勝の舞台にまで立ってくれるとは…。準決勝で東海大に勝ったときには足が震えて、目が潤んできた。まさに夢の決勝だった。

 今年1月、年始最初の集合日に「4年間見てきた中で一番弱いチーム」と話した。経験の少なさが気がかりで、叱咤激励の思いで口にしたが「一丸突破」のチームスローガンの下、最高の結果で応えてくれた。

 スタンドにいるベンチ外の選手も一丸となって臨んだ決勝戦。応援は神宮を庭とする慶応にも負けていなかった。応援団員たちも涙を流しながら応援してくれた。

 かつて低迷していたころは、新聞やテレビで結果を見るたびに悔しい思い、さみしい思いをしていた。先輩の村山実さんや上田利治さんも「どうしたんや」と心配していた。お二人も天国で喜んでくれて…いやいや、どうやろ。「タカシ、故障せんように鍛え直さんかい!」。そうおっしゃるんちゃうかなあ。(関大野球部アドバイザリースタッフ)

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