高知商・上田監督 沈みがちな雰囲気に叱咤「必ず夏は来る」部員との距離縮める
新型コロナウイルスの影響により、東京五輪は1年間延期、春の選抜高校野球をはじめとする、各競技の大会が次々と中止されている。四国でも臨時休校は続き、多くの学校で部活動は自粛、中止に。誰も経験したことのない状況が続く中、新3年生にとって最後となる夏へ、どのように向かうのか。甲子園出場経験もある高校野球指導者に聞いた。(4月5日取材)
「春の公式戦がなくなって、痛いというよりは、ひと冬やってきたことを試す楽しみが消えたという感覚ですね」。
高知商を率い2018年夏の第100回大会に出場した上田修身監督(57)はがっくりと肩を落とす。対外試合解禁から春の大会までの間で予定していた試合は、明豊(大分)、明徳義塾(高知)、尽誠学園(香川)、大分商といずれもセンバツ出場予定校。強豪校を相手に絶好の腕試しの機会だったが…。
中止期間を少しでも前向きなものにしようと努めてきた。チームのグループLINEに「友だち」として自ら参加。野球やトレーニング方法など、参考になりそうな動画を紹介しつつ、部員たちとなるべく距離を空けないようにした。また冬の間に体重の増えなかった部員が、休み明けには目に見えて体重が増加し、打球の質が変化しつつある者もいるといい、運動できないという状況をメリットとして“利用”した。
再開してからも部員たち、特に新3年生の「夏がなくなるんじゃないか」という不安は消えないという。「必ず夏は来るよ」と励ます一方で、沈みがちな雰囲気に「それでええんか?」と、叱咤(しった)の言葉も意識して口にする。高知県では感染の拡大傾向を受け、24日まで公立学校を臨時休校とすることを決定。高知商も部活を再び中止した。まだ見えない敵への不安はなくせないが、今はなんとか前を向くしかない。