【ヨシさんの野球教室】肘をうまく使うために肩の筋肉を鍛える
阪急、オリックスでエースとして活躍し、現役引退後も投手コーチとして数多くの好投手を育てたデイリースポーツ評論家・佐藤義則氏(65)の野球コラム「ピンチはチャンス!ヨシさん野球教室」をお届けする。ステイホームが叫ばれる今、レッスンを中心に、役立つ情報、思い出話など幅広く語っていく。
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投手はマウンドの傾斜を使って投げます。その時の軸足の蹴りの勢いを、ステップした足でしっかり止めることで腕が振れる。前回はそのための練習として、ペッパーを紹介しました。
とにかく早く、連続でボールを左右に転がして、それを捕ることで素早い切り返しができるようになる。そうすれば自然と蹴る、止めるという下半身の重要な筋肉がついていく、という狙いです。
この練習自体は、ボールを使わなくても工夫次第で同じ効果を上げる方法があります。ただ、不思議なのですが、やはり野球選手はボールを追いかけさせると、無意識に真剣になるんですね。本能的なものだと思うのですが「左右に走れ」と指示するよりは、ボールを使った方が一生懸命になれるし、効果も高い気がします。
前回「関節と関節との間の筋肉を鍛えましょう」と書きました。この、下半身を鍛えるペッパーもそうなのですが、他にも重要な筋肉はあります。例えば、肩周辺の筋肉もそうです。
これについて語る前に、ひとつ“誤解”を解いておく必要があります。「肩が強いからピッチャー向き」とはよく使われる表現ですが、実はピッチングで肩は使いません。もう少し詳しく言うと、腕、特に肘から先を振るための手助けとして、肩があるイメージです。
肘を曲げずに肩だけで投げる。肩を全く使わず、肘から先だけで投げる。これを比較すれば、歴然です。肩だけではほとんど投げられないでしょう。ただ、その肘をうまく使うために、肩の筋肉を鍛えておけば、より速い球が投げられます。
例えば両手を左右に、地面と平行に開いて前に100回、後ろに100回というようにぐるぐる回す。いわゆる肩のインナーマッスルを鍛え、同時に柔らかくする効果があります。
これによって、試合後半にも腕を振れる、持久力がつきます。この肩のスタミナが、肩、肘の故障予防にもなるので重要な筋肉と言えます。
◆佐藤 義則(さとう・よしのり)1954年9月11日生まれ、65歳。北海道出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。函館有斗から日大を経て、76年度ドラフト1位で阪急(現オリックス)入団。最多勝(85年)、最優秀防御率(86年)、新人王(77年)。95年8月26日・近鉄戦でノーヒットノーラン。通算成績は501試合165勝137敗48セーブ、防御率3・97。98年現役引退後はオリックス2軍投手コーチ、阪神・日本ハム・楽天・ソフトバンクの1軍投手コーチを務めた。2020年からデイリースポーツ評論家に復帰。