オリックス【きょうは何の日】2018年、由伸プロ初S、十代は球団23年ぶり快挙
「オリックス4-2西武」(2018年5月1日、京セラドーム大阪)
オリックスはこの試合、1985年から88年まで阪急ブレーブスが着用していたビジターユニホームで臨んだ。山本由伸の出番は2点リードの九回だった。抑えの増井浩俊は3連投で休養日としていた。山本は代役守護神にもまったく動じるところはなかった。
先頭の山川穂高の2球目にMAX154キロを記録すると追い込んでから148キロのカットボールで空振り三振、外崎修汰を遊ゴロに仕留める2死とすると場内からは『山本コール』がわき起こった。最後の打者エルネスト・メヒアは141キロのフォークで空振り三振。あっさりと三者凡退で勝利へと導いた。
2年目、19歳でのプロ初セーブ。球団で十代セーブは1995年の平井正史以来、23年ぶりの快挙だった。
「西武打線が調子いいのは分かっていたので、その勢いに負けないように投げようと思いました。新しい感覚ばかりで楽しかった」
山本にとってこの年、この登板が5試合目。3日前にプロ初ホールドを記録したばかりだった。試合の最後を締める1イニングは特別と言われる。それだけ抑えを務める投手のプレッシャーは桁違いということだ。そんな中でも“楽しかった”と言える山本の強心臓ぶり。恐るべき十代に当時の福良淳一監督も「きょうは増井を休ませると決めていた。由伸は初めてだけど落ち着いて投げていた。堂々としていたね」と絶賛した。
この年、山本は54試合に登板し4勝2敗1セーブ、32ホールド、防御率2・89の好成績を挙げる。
当時の高山郁夫投手コーチは山本について「ピンチになってマウンドに行くと、大抵の投手は1度はパニックになって目線が合わなくなることがある。でも、由伸は1度も目が泳いだことがなかった」と話したことがある。
なぜ、ポーカーフェースでいられるのか、ルーキー時にデイリー紙面上のインタビューでこう答えている。
「高校の監督がマウンドの態度にすごく厳しい人で、例えば審判の判定とかで顔に出すとめちゃくちゃ怒られました。それから感情を出さないようになりました」
恩師の教えを忠実に守る素直さ、そして並外れたハートの強さ。のちに球界を代表する投手の片りんはこの時点で見せていたと言える。