【ヨシさんの野球教室】コーチは選手に嫌われるべき存在
阪急、オリックスでエースとして活躍し、現役引退後も投手コーチとして数多くの好投手を育てたデイリースポーツ評論家・佐藤義則氏(65)の野球コラム「ピンチはチャンス!ヨシさん野球教室」をお届けする。ステイホームが叫ばれる今、レッスンを中心に、役立つ情報、思い出話など幅広く語っていく。
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プロの練習。前回は、ピッチャーに特化した話ではありませんでしたが、プロなのに基礎練習中心?ではなく、プロだからこそ、アマチュアの何倍も基本の反復に時間を割くという話をしました。
野手で言えば、簡単な打球を確実にアウトにする。それ以上のことは、指導者も望みません。超ファインプレーが出れば、ピッチャーはうれしいし、チームも盛り上がりますが、そのための練習をすることはないんです。
選手も分かっていますが、やはり単純作業の繰り返しは退屈です。コーチの立場で言えば、少しでも選手のやる気を喚起するために、練習内容も工夫します。ちょっと脱線しますが、コーチの在り方は大切です。
「この選手、伸びてきました。使ってあげてください」
コーチはどれほどそうやって推薦できる選手を育てるかが、仕事です。時に、気持ちの乗らない選手にも基本練習を要求します。阪神、楽天でご一緒させていただいた星野(仙一)さんの口癖は「コーチが選手に好かれようと思ったら、選手は絶対に伸びないよ」というものでした。
つらい練習をやらせる。選手の機嫌を取ることは、監督がやってくれればいい。時には「こちらの要求するレベルに届かなければ2軍に行きなさい」ということをはっきり言う。一方で、普段取り組む姿をしっかりと見ておいて、ちょっと下手くそでも、一生懸命やっているのであれば、一度はチャンスを与えるよう、監督に進言する。私はそういうコーチであろうと心掛けていました。
ですから、私が投手コーチ時代、選手たちは何をやらされるか、びくびくしていたかも知れません。
高校、大学で最上級生になる年に照準を合わせて自身を磨くのであれば、その一年、というのはとてもいい目標になります。しかしプロは「1軍で」、「何年も」活躍してこそです。選手たちに求めたのは、そこから逆算して必要なことです。具体的には次回、お話ししましょう。
◆佐藤 義則(さとう・よしのり)1954年9月11日生まれ、65歳。北海道出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。函館有斗から日大を経て、76年度ドラフト1位で阪急(現オリックス)入団。最多勝(85年)、最優秀防御率(86年)、新人王(77年)。95年8月26日・近鉄戦でノーヒットノーラン。通算成績は501試合165勝137敗48セーブ、防御率3.97。98年現役引退後はオリックス2軍投手コーチ、阪神、日本ハム、楽天、ソフトバンクの1軍投手コーチを務めた。2020年からデイリースポーツ評論家に復帰。