オリックス【きょうは何の日】2013年 育成出身・山本人生初のサヨナラ打
「オリックス3-2ソフトバンク」(2013年5月9日、ほっともっとフィールド神戸)
ミラクルにミラクルが重なったサヨナラ劇。主役は育成契約を2度経験した苦労人だった。
オリックスは1点ビハインドで九回を迎えた。この回から相手は守護神ファルケンボーグをマウンドに送る。1死二塁の同点機に4番・李大浩が中前打を放つが相手の好返球にあい、平野恵一が本塁憤死で2死。重い雰囲気が漂うが続く糸井嘉男を右前打でつなぎ諦めない姿勢を示す。これにプレッシャーを受けたのか、ファルケンボーグは川端崇義へ頭部死球で危険球退場。
球場の雰囲気が変わる。急きょ登板の金無英は制球が定まらず押し出し四球で同点。ここで途中守備から入っていた山本和作(かずなお)が打席に向かう。短く持ったバットから初球をファウルにすると、2球目、真ん中に来た直球をライナーで中前にはじき返すプロ初どころか野球人生初のサヨナラ打。
兵庫県川西市出身。地元での劇打にヒーローインタビュー。
「いやー、もう、興奮しすぎて何も言えないです」
山本は20008年の育成ドラフト3位で巨人入り。11年5月に支配下登録を勝ち取るが、10月に左膝を骨折し、再び育成契約に逆戻り。12年に支配下に復帰するが1軍では出番がなく、巨人の2軍コーチ時代に指導を受けた森脇浩司監督に呼ばれるようにトレードでオリックスへ移籍していた。
実は昨秋のキャンプで再会した際に指揮官から「お前がサヨナラを打っている夢を見た。イメージはできてるぞ」と声を掛けられたという。山本は「そのときは僕にはよく分からなかったけど正夢になるなんてスゴい」と目を丸くした。
山本はこの年96試合に出場し、打率・226、4本塁打、15打点の成績を残した。巨人時代に1軍出場はなかったが、オリックスでは2015年に引退するまで115試合に出場した。
この試合では先発・海田智行のあと八、九回の2イニングを無失点で抑えたプロ2年目の佐藤達也がプロ初勝利を挙げている。
「棚ぼたです。うれしいですけど、チームが勝ったのが何よりです」
投打のヒーロー2人がともにプロ初というミラクルな一戦となった。