“世界初”身体障がい者専用グラブ誕生 常識覆した!日本代表エース早嶋驚き

 専用グラブでのフォーム。左手を引きつけられるようになった
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 岡山県立和気閑谷高校野球部の生徒たちのアイデアを元に、“世界初”の身体障がい者専用のグラブが誕生した。「地域協働事業」の一環で行われた、障がい者野球の強豪「岡山桃太郎」との交流をきっかけに、地元野球用品メーカーの協力を得て3月に完成。障がい者野球日本代表のエース・早嶋健太投手(24)の野球観を変えたという一品を取材した。

 「オレ、ピッチャーみたいだな!」

 早嶋には生まれつき左手首から先がない。投球時は十字型のウェブに左手を入れて持ち、投球後、一瞬で右手に持ち替える。しかし、グラブが落ちないように常に気を使い、右腕を力任せに振らねばならず、自分の理想とは言いがたかった。負担は大きく、大学3年時に悲鳴を上げた右肘を昨年3月に手術。それでも痛みが完全にはなくならず、痛みを抱えたままプレーを続けた。

 そんな早嶋と交流戦で対戦した和気閑谷の部員たち。「早嶋さんのために」という思いを形にすることを決めた。

 柴谷祐人部長(29)を中心に「使いやすさ」を最優先に、細かいことは考えず全員でアイデアを出し合った。投げ終わると同時に袖から出てくる、捕球時に自動で開閉するなど、枠にとらわれないアイデアもあった中、浜本涼一投手(2年)と河野純大投手(2年)の案を採用。岡山市を拠点に野球用品を手がける「Romane Crowe(ロマネクロウ)」のグラブ職人・森川徹也氏(32)の協力を仰いだ。

 最大の特徴は背面につけられたポケットだ。奥に“遊び”の部分があり、少し曲げることができる左手をひっかけ、安定感を生み出す。さらに右手を入れる部分を約1・5倍広げ、調節用のベルトも片手で操作できるように。内部は人さし指から薬指の仕切りをなくし、着脱をスムーズにした。約3カ月で完成にこぎつけた。

 新グラブで投じた第1球。「すげえ!めっちゃ(ボールが)指にかかる!すげえ!」。落下の心配がなく、体全体を使えた。常識が覆った。今までにない感覚に、早嶋は子供のようにはしゃいだ。その姿を見た浜本は「早嶋選手がめっちゃはしゃいでいて、かわいかったです」と笑い、河野も「人のためになるって、こんなにもうれしいのか」と喜びを実感した。

 和気閑谷では今回の交流を次につなげ、野球をパラリンピック種目とするための後押しを目標に掲げる。柴谷部長は「我々の携わったグラブが広く普及していけば、いろんな人の力になれる」と語った。

 グラブの平裏部には皆で考え「唯一夢二」と刺しゅうを施した。思いがつまった言葉に「プレッシャーはすごい」という。一方で「(パラリンピックが)あるのならば、出たい」と言い切った早嶋。大きな「夢」に向かい、投げ続ける。

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