【ヨシさんの野球教室】いつでもストライクをとれる技術を
阪急、オリックスでエースとして活躍し、現役引退後も投手コーチとして数多くの好投手を育てたデイリースポーツ評論家・佐藤義則氏(65)の野球コラム「ピンチはチャンス!ヨシさん野球教室」をお届けする。ステイホームが叫ばれる今、レッスンを中心に、役立つ情報、思い出話など幅広く語っていく。
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以前、日本ハムでコーチをしていたころの事です。とてもいいボールを投げるピッチャーがいたのですが、1点でもリードをすると、突然、ストライクが入らなくなりました。
普通はリードをもらうと「ヨーシ!」となって、さらにいいピッチングになると思うのですが、逆でした。性格の問題、配球の問題などあるでしょうが、どんな心理状況にあっても、いつでもストライクを取れる技術があれば、そんな事にはなりません。
そういう技術を高めるためには、普段のピッチング練習が大切になってきますよね。ブルペンで、どういう工夫をするか。
コントロールが大事。これは誰でも分かっている事です。例えばそれを磨こうとして、ブルペンでキャッチャーにストライクゾーンの隅っこギリギリに構えてもらう。そんな練習をしているピッチャーもいますが、果たしてどうでしょうか。
例えば楽天で、そこにある程度思い通り投げられるピッチャーは岸くらいです。キャッチャーがミットを動かさないで捕れる。則本昂でも、3球続けては無理でしょう。
そんな、プロでもできない練習が、必要でしょうか。特にアマチュアであればもっとシンプルに、「10球投げて、8球ストライクが入ったら、練習終わり!」くらいで十分だと思います。
それでも、9球投げて、7球ストライク。次はどうしても決めなければならない、となれば相当なプレッシャーがかかります。「最後の1球」に集中する練習は、この程度でも十分できるんですね。
コーチ時代、選手たちに「君たちと違って、ボールは素直。腕を振った通りにしか行かない」と、意地悪な事を言いながらも、とにかく素直に投げ、ストライクを取るという練習を要求しました。
ストライクゾーンの隅っこを刺すほどのコントロールはいりません。「だいたいあのあたり」でいつでもストライクを取れるなら、あとは配球で「甘い球を打ちづらい球」にする事もできるからです。
◆佐藤 義則(さとう・よしのり)1954年9月11日生まれ、65歳。北海道出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。函館有斗から日大を経て、76年度ドラフト1位で阪急(現オリックス)入団。最多勝(85年)、最優秀防御率(86年)、新人王(77年)。95年8月26日・近鉄戦でノーヒットノーラン。通算成績は501試合165勝137敗48セーブ、防御率3・97。98年に現役引退後はオリックス2軍投手コーチ、阪神・日本ハム・楽天・ソフトバンクの1軍投手コーチを務めた。2020年からデイリースポーツ評論家に復帰。