7・28コリジョン検証 選手の安全は担保しつつ、ルール運用に新たな基準設けても
本塁上での走者と守備側の衝突によるケガを未然に防ぐ観点から、2016年に導入されたコリジョンルール。7月28日の広島対中日戦(マツダ)の八回、完全にアウトのタイミングで滑り込んできた中日・大島との接触を避ける形を取った広島・会沢のタッチプレーがリクエストでセーフに覆って同点となり、逆転負けにつながるシーンがあった。審判団の判定、守備側の最善策、コリジョンルールの今後など、デイリースポーツ評論家陣の声を織り交ぜ、検証する。
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本塁上のクロスプレーは、野球の醍醐味(だいごみ)のひとつである。本塁を狙って全力で駆ける走者。それを阻まんとする矢のような送球。その二つが瞬間的に絡み合い、審判が下すジャッジを両軍ベンチ、観客が固唾(かたず)をのんで見守る。
2016年にコリジョンルールが導入されるまでは、走者の生還を食い止める捕手のブロックは技術の見せ場だった。ただ、不要なケガを未然に防ぐため、走者が滑り込めないほど本塁に覆いかぶさるようなブロックは禁止になって当然だし、本塁をこじ開けようとする走者側の悪質なタックルも同様だ。
今回の場合、会沢が安部からの送球を受けたタイミングと、大島が滑り込むタイミングがもっと際どければ、仮に判定がアウトからセーフに覆っても異論が出る余地は少なかったと思う。走者サイドの技術の見せ場と位置づけられるところもあるからだ。
導入後、各球団の捕手は無用で過度な接触を避けるため、新ルールの精神にのっとってプレーを重ねてきた。振り返るに、このルールの土台にあるのは選手の安全を守り、悪質なプレーを排除することにあったはず。
完全にアウトのタイミングだとして、遠慮気味にタッチしにいったように映った会沢。それでもなんとか1点を奪おうとした大島。そのどちらをも非難するつもりはない。どちらも最大限可能なプレーをしたのだと思うから。ただ、あのワンプレーにおいて、大島の技術が勝り、会沢が甘かったと受け止められる向きがあるとするならば、悲しくて、怖い。
コリジョンルール導入から5年。年を経るごとに少しずつ運用に変化が加えられてきた。今回のプレーと判定を今後にどうつなげられるのか。選手の安全は担保しつつ、ルールの運用法に新たな基準、柔軟な対応が加わってもいいのではと思う。(デイリースポーツ・プロ野球デスク・鈴木健一)