【メジャースカウトの眼】天理・達 メジャー好みの「未完の大器」伸びしろは5割以上
「高校野球交流試合、広島新庄4-2天理」(11日、甲子園球場)
中止となった今春のセンバツ出場校32校が招待された「2020年甲子園高校野球交流試合」が開幕。ようやく聖地に戻ってきた球児たちに、プロも注視している。今回の交流戦では、日本で米大リーグのスカウトを20年以上務めるカンザスシティ・ロイヤルズの大屋博行国際スカウトが金の卵を分析。学年や進路にこだわらず、メジャーの視点で気になる素材を紹介する。
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天理・達君のことは、体格のいい投手がいると以前から聞いていた。中学時代は3、4番手で、技量的に誰もが注視するような存在ではなかったが、順調に伸びてきている。腕の振り、体の動き、体重移動、バランス、全て整って癖がなく、理想的な投手らしい投手。器の大きさを感じるメジャー好みの素材だ。
3月27日生まれの16歳で既に193センチというから、まだ伸び続けているだろう。当たり前の話だが、高身長ならそれだけ高い位置から投げ下ろすので、引力に逆らわない。角度がつき、縦の変化もさらにつけられる。しかも、彼はバランスがいいので動きがモタモタせず常に自然体だ。
150キロを出すとか、腕の力や指の力が強いとか、今の時点で部分的に突出した部分があるわけではない。肉体的にも体力的にもまだまだ子どもだが、だからこそ「未完の大器」の「未完」の部分がたくさんある。私はまだ5割以上の伸びしろがあると見ている。
この日は最速143キロだったが、おそらくその気になれば140キロ台後半で投げられただろう。しかし、彼は自分が速い球を投げたいという気持ちより、試合全体を見ていたようだ。投手として大事な精神面での安定感も持っている。