原巨人、連覇 監督14年で9度目V!特別なシーズン「20年ルールで」乗り切った
「巨人3-3ヤクルト」(30日、東京ドーム)
セ・リーグは30日、優勝へのマジックナンバーを「1」としていた巨人がヤクルト戦に引き分け、2年連続38度目の優勝を決めた。1リーグ時代の9度を含めると47度目。昨季から巨人で3度目の指揮を執る原辰徳監督(62)にとっては通算9度目。コロナ禍で難しい舵取りを迫られた中、チームの力を結集させてペナントをつかんだ。巨人は2012年以来23度目の日本一を懸けて、11月21日から行われる日本シリーズに挑む。
夢見心地で9度、宙を舞った。裏方さんがマスク、手袋を着用して行われた異例の胴上げ。選手たちが距離を取って万歳する中で、原監督は天高く両手を突き上げた。目標のセ・リーグ連覇を成し遂げ「6月19日に開幕を迎え、始まってからも戦いはありましたけれども、選手たち、コーチ、スタッフ、もうちょっと言うならば私もよく頑張りました」と顔を紅潮させた。
誰もが予想し得なかったコロナ禍に揺れた激動のシーズン。不安を必死に打ち消しながら、前に進んだ。感染が広がっていた5月8日、球団事務所を訪ねた。山口オーナー、今村球団社長にチーム全員の抗体検査を直談判。「スクラムを組んでみんなが安全だと分かった上で野球をやりたい」。全員のPCR検査実施を提案し、実現にこぎつけた。
シーズン中も「誰か体調が悪くなったら、すぐ分かるように」と抗体検査キットをキャリーケースにしのばせた。万全の態勢で試合に打ち込めるように尽くした結果、シーズン中の1軍感染者はゼロ。個々の欲望を捨て、勝つことに専念した選手に感謝した。
特別な年の連覇へ、チームに厳しさを求め、開幕前のコーチミーティングでは「選手に対して鬼になれ!」と発破をかけた。選手が同じ失敗を繰り返した時はコーチに厳しい忠告をする。が、そこに優しさも併せ持つのが原流だ。
8月19日の阪神戦。メルセデスが左肘に異変を訴えて降板。悔し涙を流した左腕に宮本投手チーフコーチはもらい泣きした。勝負師に涙は禁物が持論の指揮官だが、謝罪に訪れた同コーチに「ミヤ、お前は常に一生懸命だ。一生懸命やっているから涙が出るんだ。いいことだよ」と諭した。
外出制限がかかる遠征先では選手、コーチのストレス軽減にも手を尽くす。食事会場で顔を合わせるコーチ陣に「何かニコッとするような面白いことを考えないと」と、巨人版「すべらない話」を開催。指揮官自ら仕切り役を務め「次に指名されるかもと思うから、人の話なんか聞いてない。結構面白かった」と笑う。チームを和ませ、時に愛情を持って寄り添うからこそ、全コーチが原監督を頂点に一つの組織としてまとまった。
過密日程をどう乗り切るか。考え抜いた末に「2020年ルールで戦う」と決めた。途中交代した選手を試合中に時には帰宅させる。9月のある試合では大量リードの展開で坂本を交代させ「勇人、シャワーを浴びてマッサージしなさい」と促した。10月4日の甲子園・阪神戦で三回に無死満塁を抑えた大江も、降板後に帰宿させた。「もう、すごい日程だから。終わった人は明日に備えると」。勝利の輪にいることよりもコンディションを優先させ、主力の無事完走につなげた。
監督14年で9度目の優勝。球界屈指の名将は「今日の優勝で疲れも半減し、英気を養うと。来る日本選手権は、どっかのチームでしょう。そのチームと正々堂々と戦って、日本一になることを祈願してあいさつにかえたい」と先を見据える。まだ志半ば。8年ぶりの日本一奪回へ新たな手を打ち、最大目標の日本一へまっしぐらに突き進む。