三菱重工広島75年の歴史に幕 最後の都市対抗も“重工野球”伝統貫いた
「都市対抗野球・2回戦、日本新薬5-2三菱重工広島」(29日、東京ドーム)
三菱重工広島(広島市)は2-5で日本新薬(京都市)に敗れ、75年の歴史に幕を下ろした。初回、実政太一外野手(34)が先制ソロを放つも、投手陣が中盤に崩れた。都市対抗は17度の出場で、1979年には初出場優勝を果たした古豪。系列チーム再編により、今大会が最後の出場だった。
食らいついた。3点を追う九回1死。三菱重工広島は堤裕貴内野手(27)、代打・鳥井凌外野手(24)がそれぞれヘッドスライディングで内野安打を勝ち取った。最後まで全力で体現した“重工野球”。思いをグラウンドにぶつけた。
だが後続が倒れ、敗退。それでも悔いはない。「諦めない気持ちと闘争心を前面に出して向かっていくのが伝統。九回は胸が高鳴るというか武者震いがしました」。最古参で16年目の実政はナインの心を代弁した。
初回、実政が先制ソロ。幸先のいいスタートを切るも、投手陣が五、六回に3本の本塁打を浴び、計5失点で逆転を許した。打線は二回以降3安打に抑えられ、七回に1点を返すのがやっとだった。
三菱重工4チームが来年から横浜と神戸・高砂の2チームに再編される。広島にとっては今大会が最後の都市対抗だった。これを期に現役を引退する選手もいれば、移籍してプレーを続ける選手もいる。今年3月の再編発表後はモチベーションの違いが生じた。それでもミーティングを繰り返し、生まれた強い団結力。最後の大舞台までたどり着いた。
町田公二郎監督(50)は「いろいろな選手を指導することができて感謝している。ここで頑張った気持ちを忘れず、今後も頑張ってほしい」とエールを送った。試合後、球場内を包んだ温かい拍手。75年の歴史に幕が下りた。
◆三菱重工広島・松永弘樹内野手(今大会で引退)「終わったなという感じです。(九回はビハインドでも)みんなが笑顔で暗い雰囲気はなかった。広陵を出て、大学は東京(早大)。広島に帰るチャンスをもらった。骨を埋められて良かった」
◆迫田守昭氏(三菱重工広島OB。監督としても1979年の都市対抗で初出場初優勝に導く)「選手の鬼気迫る思いが伝わってきた試合だった。鮫島投手のダッシュ、堤選手らのヘッドスライディングは見ている人の心を打つプレーだった。本当に素晴らしい後輩たちです。三菱広島でプレーした誇りを胸に、新しい舞台でも頑張ってほしい」