巨人・菅野 メジャー意識したフォームだった 北別府氏「挑戦するのは世の中の流れ」
ポスティングシステムの今オフの申請期間が12日に終了した。巨人の菅野智之投手(31)は、8日に同システムによる移籍交渉の手続きを米大リーグ機構(MLB)に申請され、MLB球団との契約交渉が可能になった。今季は14勝2敗、防御率1・97の活躍で連覇に貢献。果たしてメジャー移籍し活躍できるのか。北別府学氏(デイリースポーツウェブ評論家)に聞いた。
ポスティング申請が終了し、菅野は夢のメジャー移籍に前進した。北別府氏は「今年はメジャーに行くことを意識したかのように投げ方に変化が見られた。シーズン中から上半身主体の強引な投球フォームであると指摘していたが、それはメジャーを意識したフォームだろうと思って見ていた」と、投球フォームの変化にメジャー移籍を予感していた。
通算213勝を挙げ、長きにわたって広島のエースを務めてきた北別府氏は「日本球界からいろんなピッチャーがメジャーに行った。自分の力を試したいという気持ちはあるだろう。世界の野球の頂点であり年俸も評価してくれる。日本で実績も作った投手だからこそ、今度は世界の野球の頂点である大リーグで挑戦したいという気持ちは理解できる」と菅野の気持ちを思いやった。
北別府氏は現役時代にメジャーを意識したことはないという。「日米野球で大リーガー相手に投げたけど、これは通用しないと思った。簡単には勝てない。半ば旅行気分で来ているのではないかなと思うような家族連れで楽しそうにしているアメリカのチームに1勝もできなかった。メジャーの球団が少なかったから打者はすごかった。スライダー、シュートをストライクゾーン四隅に投げても狙い球を絞られたらカンカン打つ。村上(雅則)さんや江夏(豊)さんが通用しなかったんだから。ただ、あの当時と比べて今はチーム数も増え、超一流選手が分散している。スピードも違うし、落ちるボールがある」と昔との比較をした。
そして「今は低いゾーンを振ってくれる。高めに浮くピッチャーは通用しない。メジャーで結果を残した黒田(博樹)は、日本でまっすぐとフォークそしてスライダーを少し投げていただけ。それがメジャーに行ってツーシームなど落ちる系のボールを覚えて、落ちるボールをいかに振らせるかという投球で結果を出した」と話した。
コロナ禍で移籍が不透明なところもあるが、菅野のメジャー移籍がかなえば「今年も14勝を挙げ、菅野がいたから巨人があれだけ強かった。それだけの内容を残している。コントロールと落ちる球をうまく使えれば十分通用するだろう」と活躍に太鼓判を押した。
ただ「シーズン中から指摘したように今年の投球は強引に押さえ込んだり、外を狙っているのにインサイドにいったり、逆にインサイドを狙って引っ掛けたりしていた。17、18年に沢村賞を取ったときはもっとコントロールが良かった」といい、「メジャーの先発ローテーション投手は中4日で100球を投げていく。今年のフォームでは故障が心配だ」と環境の変化も不安材料にあげた。
菅野が移籍すれば日本球界からまたエースが流出する。「おじさん(原監督)がダメと言うわけにもいかないだろう。球団にも十分恩返しをしているから巨人もノーとは言えなかったんじゃないかな。日本球界のエースが夢を描き、挑戦するのは世の中の流れでもある」と結んだ。