野球ゲーム「パワプロ」「プロスピ」選手の能力どう決まる?コナミプロデューサー直撃
野球ファンに絶大な人気を誇る株式会社コナミデジタルエンタテインメントの野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」と「プロ野球スピリッツ」シリーズ。人気の理由の一つは、詳細にこだわった選手の能力だ。これはどういう経緯で決まっていくのか-。「パワプロ」シリーズのシニアプロデューサー・森博信氏、「プロスピ」シリーズのプロデューサー・山口剛氏に話を聞いた。
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「パワプロ」と「プロスピ」では実在のプロ野球選手のデータを再現しながら、それぞれに個性を持つ。基本はシーズン成績を取り込んで作るが、鍵はその後のアレンジだ。
山口氏「12球団それぞれに番記者的な担当がいて、ファンの方の印象みたいな部分の味付けをしていきます」
番記者!?まるで新聞記者のようだが、その番記者たちは、どういう情報を集めるのか。
山口氏「基本は野球観戦。(テレビ)中継が中心ですが。あとは投手の方はインタビューなどで球種に触れられたりするので、そういう情報を拾いながら…という作業ですね」
野球選手が実際にゲームをプレーするコンテンツ作成時には選手へも“取材”するという。細かな作業が選手能力にリアルを生む。
しかし番記者にも特定球団のファンはいる。能力設定が偏ることはないのだろうか。
山口氏「基本的にファンの球団は担当しないです(笑)」
森氏「球団への思い入れが高まってきたタイミングで担当を変更したりと(笑)。データの方は最終的にバランスを取る人間がいます」
番記者を統括する、新聞社でいう「デスク」のような存在がいるのも面白い。その中で各ゲームの特徴に則した作業も行われる。
森氏「パワプロはプロ野球の魅力を楽しむ『ペナントモード』があり、実際と近い形のペナントレース、タイトル争いを楽しめるバランスを大事にします」
選手育成の「サクセスモード」も人気であり、球種が多いと単純に強い選手となる「パワプロ」で、選手を作る楽しみ、使う楽しみを両立させるバランスを重要視。逆に「プロスピ」が追求するのは徹底したリアルだ。
山口氏「基本は全球種再現をベースに、それぞれの球種で球威、変化量、制球のパラメータを持ちます」
球種名もヤクルト・石川のカツオカーブ、楽天・津留崎のマッスルカーブなどファンの認知度に応じて取り入れる。さらに、変化の挙動さえもリアルに再現した選手がいる。
過去に楽天に在籍した田中(ヤンキースからFA)のスライダーを表現しようとした際、標準のスライダーでは再現ができなかった。そこでオリジナルで田中専用の球種を準備したという。
マー君という超一流の存在、制作側の挑戦心が「プロスピ」を進化させた。ゲーム難易度とのバランスでオリジナル変化球は一部選手での実装だが、全選手で表現される日が楽しみだ。ゲームはデジタルだが、根幹を成すのは人の努力や遊び心。だからこそ長く野球ファンを魅了する作品が作られるのだろう。