21世紀枠の東播磨 コロナ禍に負けず培った“心の密”
「選抜高校野球・選考委員会」(29日、大阪市内)
昨秋、近畿大会に初出場した東播磨(兵庫)が、21世紀枠で春夏通じて初の甲子園切符をつかんだ。コロナ禍の中でオンラインを活用して指導者と選手がコミュニケーションをとった新しい部活動の方法が評価された。
吉田博昭校長から朗報が伝えられると、寒風が吹きすさぶグラウンドに歓喜の雄たけびが上がった。原正宗主将(2年)は周囲の支えに「甲子園で校歌を歌って恩返ししたい」と誓い、エースの鈴木悠仁投手(2年)も「こういう社会状況の中で甲子園で野球をやらせてもらえる。これからしっかり練習したい」と気持ちを引き締めた。
部員のほとんどが軟式経験者。14年から指揮をとる福村順一監督(48)は、母校でもある同校のナインについて「地元出身の普通の高校生。ただ本当に野球が好きでひたむきに純朴に頑張っている」と言う。前任の加古川北で08年夏(初戦敗退)、11年春(8強)と、無名の公立校を2度聖地へ率いた。今回評価されたのは、同監督と選手が生みだした、新しいコミュニケーションの形だ。
コロナ禍が拡大した昨年3月から約3カ月、部活動が停止した時期に、福村監督は「コロナ対策LINE」と名付けた野球部のLINEグループを作成。YouTubeなど他の複数のアプリも使って50本以上の動画を共有した。監督がプレーして技術指導したり、板書で座学を行ったりして、選手は自宅や公園でそれを受けた。ビデオ会議アプリ「Zoom」で個別指導も行った。
SNSが苦手だったという福村監督は「今までわかっているだろう、先輩から引き継がれているだろうと思っていたことが伝わっていなかったと気づかされた」と、苦肉の策には思わぬ効果もあった。「(実際の)密はだめでも、いろんな手段を使うことで今まで以上に密な関係になった」。コロナ禍に屈せず培った“心の密”が、夢の聖地切符をもたらした。