巨人広報部・朝井秀樹さん 現役時代のキャリア「今はいらない」黒子に徹する元ドラ1
コロナ禍が続く中でもチームを支える裏方の存在は欠かせない。現役時代に注目を集め、今も陰で奮闘する元選手を紹介する「裏方はスゴ腕」。第2回は巨人広報部・朝井秀樹さん(37)。01年の近鉄ドラフト1位右腕は、阿部2軍監督率いるファームを担当し、日夜走り回っている。
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南国の日差しが照りつける宮崎・ひむかスタジアム。阿部2軍監督がノックバットを振る横で、朝井広報はトスを上げながら声で練習をもり立て、夜間練習では打撃マシンに球を入れ続ける。「裏方は選手が野球に集中できるように。そしてスキルアップのお手伝い」。報道陣への対応だけでなく、練習の補助も重要な役割だ。
2001年度にドラフト1位で近鉄に入団。球団合併で楽天に移籍後、08年に9勝を挙げるなど活躍した。10年にトレードで巨人に移籍し、12年に現役引退。4年間打撃投手を務めた後、昨年から広報業務にあたっている。
明るいキャラクターで選手からの信頼も厚い。打撃投手時代の19年5月。チームは4連敗し、重苦しいムードで中日戦を迎えた。すると、試合前に主将・坂本から「朝井さん、今日試合前の声出しな」と突然指名された。
裏方が円陣の中心で士気を高める役を務めることはめったにない。「どんなテンションでいったらいいか分からないし、何を言えばいいのか…」と困惑。坂本に再確認したが、真剣な表情で「マジでやってください」。
覚悟を決めると、あいさつ後に「三・三・七拍子」ならぬ、動きを交えた「三・三・二拍子」で締めくくり、爆笑を勝ち取った。別の試合ではPL学園の先輩・吉村コーチのモノマネで和ませたことも。“盛り上げ役”としてもチームに欠かせない存在だ。
「選手には100%集中して試合に臨んでほしいし、要望には何とか応えていきたい」。現在は2軍を担当。キャリアの浅い選手が気軽に接してくれるように、「野球をやっていた感をなくしたい。ドラフトにかかった、何勝した、今の仕事にそういうのはいらない」とまで言い切る。威圧感をなくすため、減量にも取り組んだ。
現役時代を共にし、目をかけられている阿部2軍監督には「優しい、面倒見のいい先輩」と尊敬の念を込める。未来を担う若手の成長を願い、黒子としてサポートを続けていく。
◆朝井 秀樹(あさい・ひでき)1984年1月1日生まれ、37歳。大阪府出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。PL学園から2001年度ドラフト1巡目で近鉄入団。05年から楽天に在籍し、10年途中に巨人移籍。通算成績は113試合25勝33敗4ホールド、防御率4・09。12年の現役引退後は16年からの巨人打撃投手を経て、19年から巨人球団職員として広報部に所属。