楽天 マー君の女房役はだれ?捕手に求められるフレーミングの技術
今年は新型コロナウイルスの影響で無観客スタートとなったプロ野球のキャンプ。デイリースポーツでは、球場で観戦できない読者に代わり、最前線の今をお届けする『プロ野球番記者ワイドEYE』を企画。最終回は楽天から、8年ぶりにチームに復帰した田中将大投手(32)の女房役を誰が務めるのか、に迫る。大本命不在の混沌(こんとん)とした正捕手争い。投手陣や打線にはタレントがそろっているだけに、扇の要が悲願のリーグ優勝&日本一へ鍵を握る。
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マー君の相棒は誰になるのか?投手の好投は捕手との共同作業。いくら昨季までメジャーの第一線で活躍してきたスターでも、女房役がおぼつかなければ、投球に直結する。右腕の活躍は捕手の腕にかかっていると言っても過言ではない。
捕手陣の指導に当たる光山英和バッテリー兼守備戦略コーチは、配球面に関しては田中将自身で組み立てていけると分析。その上で「盗塁を刺したり、後ろにそらさなかったり、打ったりってところ」が田中将の相棒に求められる資質であると語った。
現在1軍キャンプに参加している捕手は、太田、下妻、田中貴、石原の4選手。「公平に」という同コーチの思いで、順番に右腕のブルペン入りの相手役を務めてきた。
いずれもまだ20代。全国的な知名度はないが侮るべからず。昨季、チームで最も先発マスクをかぶった太田の盗塁阻止率・333はリーグNo.1。「甲斐キャノン」で名をはせるソフトバンク・甲斐をも上回っている。
その太田が9月に左肩故障後に頭角を現したのが、下妻だ。育成、独立リーグ派遣も経験した苦労人は盗塁阻止やブロッキングに改善の余地を残すものの、同コーチは「下妻は勘が良いというか、配球的になるほどってことをするし、おもしろいリードもできる」と評価する。
他にも昨季途中に巨人からトレードで加入した田中貴、打撃でアピールを続ける高卒5年目の石原も、虎視眈々(たんたん)と正捕手の座を狙っている。
そんな捕手陣に田中将が伝えるのはフレーミングの重要性。フレーミングとは、ストライクゾーンぎりぎりのボールを審判にストライクとコールさせる技術。ボール球をうまくミットを動かしてストライクゾーンに投じられたと見せる。
右腕加入前から積極的に取り組んできたというキャッチング技術だが、ミットを動かす行為に嫌悪感を抱く投手もいる。それが「田中投手に言われたおかげでやりやすくなったところはありますね」と意識改革が進んだと光山コーチは語る。
石井監督も「良い状況でこのキャンプをやってくれた」と正捕手争いを注視。「キャッチャーをコロコロ替えるとシーズンが成り立たない。安定してチームを勝たせられるキャッチャーに任せたい」と絶対的な存在の出現を待っている。降って湧いたように突然訪れた“伝説の投手”の女房役を務めるチャンス。名を上げるまたとない好機を、逃すわけにはいかない。