イチローグラブ製作秘話 「ストレスを感じる」50個作り厳選6個で渡米も…
野球選手にとって欠かせない商売道具の一つが「グラブ」。多くのプロ野球選手が愛用するミズノ社に“潜入”し、ミズノテクニクス株式会社 波賀工場のグラブマイスター・岸本氏、伊藤氏にオンラインで取材。マリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(47)のグラブを担当している岸本さんが、前任から担当を引き継いだ当時の秘話を明かした。
岸本さんは2006年にグラブ作りの名人と呼ばれた坪田信義さんからイチロー氏の担当を引き継いだ。初めて自身で製作したグラブを提案するために、約50個作り、その中から厳選した6個を携えて米・シアトルへ向かった。だが、最初のグラブは手を通すなり「ストレスを感じる」と返され、一つも受け取ってもらえなかったと振り返る。
高い操作性が求められるイチロー氏のグラブ。一般の外野手用グラブより0.3~0.4ミリ薄い革を使っていた。薄ければ柔らかくなりやすく、形も崩れやすい。工場全体でバックアップし、試行錯誤の末、2度目の渡米となった06年10月に1個だけ受け取ってもらえたという。
ただ、試合で使ってもらえるようになったのは07年のオールスターから。「うれしさもありましたけど、安心感が大きかったですね。そこからイチローさんのグラブ作りが続きました」。お互いに折れることなく、納得する逸品を作り上げていった。現在も野球に携わるイチロー氏のグラブを作り続けている。