センバツで剛腕2投手がともに異変 高校野球界“エース頼み”脱却の流れ加速か

晴れやかな表情を見せる天理・達孝太(中央)=撮影・高部洋祐
試合前練習をする天理・達孝太。背番号1は東海大相模・石田隼都(撮影・吉澤敬太)
8回終了後、氷で体を冷やす中京大中京・畔柳亨丞(撮影・高部洋祐)
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 「選抜高校野球・準決勝」(31日、甲子園球場)

 「球数制限」が導入され、各校の監督の采配にも注目が集まった今大会。結果的には複数投手で勝ち上がってきた東海大相模(神奈川)と明豊(大分)が決勝に進み、改めて“エース頼み”では勝ち進めない現実が浮き彫りになった。

 準決勝では天理・達が東海大相模戦を脇腹の違和感で登板回避。中京大中京も明豊戦で畔柳がリリーフ登板したが異変を訴えて途中降板し、ともに敗退となった。準決勝まで剛腕エースがほぼひとりで投げ抜いてきた両チームだったが、力尽きた。

 天理・達は準決勝までの3試合で計459球。達は「準々決勝の仙台育英戦後に脇腹に痛みを覚えた。試合中は気づかなかったが、バント処理で滑ったときかなと思う」と振り返り「投げられない状態ではなかったが、メジャーリーガーという目標があるので故障したら意味がないと思って監督と相談した」と、登板回避の舞台裏を明かした。

 一方の畔柳は初戦から3試合で計379球を投げており、この試合で121球を投げれば「1週間500球」の球数制限に到達。この日は四回途中からマウンドに上がったが、2回1/3を無失点、31球で交代となった。白衣のドクターがベンチに向かった直後に代打を送られた。

 畔柳は「3者連続三振を奪ったときはいけると思ったけど、ベンチに帰ったときに腕に力が入らなくなった」と説明。降板を決意したという。

 この日の試合後、天理・中村監督は達に登板回避を伝えたのは30日の夜だったことを明かした。宿舎の夕食時に「もう投げないよ」と話すと「受け入れるようにうなずいていた」という。試合終盤に達がブルペンで投球練習を始めたが、中村監督は「100%なかった」と、登板させる意思はなかったと語った。

 かつてはエースひとりで決勝まで戦い抜いたチームもあった。だが、この日はエースが登板するか否かに注目が集まるなど、球児を取り巻く環境も変わりつつある。両校の監督、エースもコンディションを重視しての決断。エース頼みから脱却する流れが加速しそうな一日となった。

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