ヤクルト・奥川「感謝」のプロ初星!魂の84球 初回大量失点…5回5失点も打線援護
「ヤクルト11-7広島」(8日、神宮球場)
もらったウイニングボールを、ヤクルト・奥川は握りしめた。座右の銘は、耐えて勝つ。苦しみながらも耐えて、もがいて、つかみとったプロ初勝利。「野手の皆さんに感謝しかない。お立ち台に立ちたいと思っていたのでうれしいです」。強い思いは結実した。
立ち上がりに落とし穴があった。2死から5連打で4失点。4-4の三回には鈴木誠に被弾。それでも直後に味方が逆転してくれた。二回途中の強雨による54分間の中断を乗り越え、5回10安打5失点。魂のこもった84球に野手陣が大量援護点をプレゼントした。
逆境に燃えた。人生一の挫折が奥川を強くする。星稜1年の秋。石川大会決勝と北信越大会決勝で対戦した日本航空石川に2試合で16失点。「めった打ち食らいましたね。止められない、抑えられないって」。マウンドで必死に唇をかみしめた。
その当時、星稜・林和成監督はこんな言葉をかけたという。「打たれてよかったな、星稜に来てよかったな」-。苦い経験が強く、悔しい思いが糧になる。奥川も「こんなところで打たれてていいのか」と自問自答した日々を越え、鍛錬の冬を過ごした。プロ野球選手になるのが夢。立ち止まるわけにはいかなかった。
味方の諦めない姿に何度も励まされた。快投だったわけではない。それでも苦しみ抜いた先に、たどり着いた答えもある。「今日は野手の方に助けてもらった、今度はチームを助けられるような投球ができるように」。ドラ1で入団した2年目右腕のプロ野球人生は始まったばかり。踏み出した第一歩は仲間の思いの詰まった1勝と重なった。