巨人薄氷の勝利 激闘の明暗を分けたのは?「インサイドワークの差」と高代氏
「広島2-3巨人」(4日、マツダスタジアム)
巨人が必死の継投で広島との激闘を制し、1点差で勝ちきった。明暗を分けたのは?デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は「両軍捕手のインサイドワークの差が出た試合だった」と語り“抑え捕手”炭谷の名前を挙げ、陰の殊勲者と評価した。
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最後は何とか巨人が逃げ切った形になったが、クローザーのデラロサがいないという事実は重いね。
ベンチも懸命の継投策に出ていた。九回の頭まで中川に任せ、あわよくばビエイラで…。そんな腹づもりもビエイラの不安定さは拭えず、桜井と高梨を投入して逃げ切るという薄氷を踏む展開になった。
最終的に2死満塁まで追い詰められたが、この絶対絶命のピンチを乗り切った最大の立役者は、老練なインサイドワークを駆使した途中出場の炭谷だったように思う。
そして、この試合の明暗を分けたのは捕手の差。そういっても過言ではないだろう。
まず炭谷とは対照的に、未熟さを露呈した広島の坂倉の失敗から説明しよう。
明らかにおかしいと思える配球をしたのは六回の丸へのホームランだった。1ストライク後の2球目。なぜ森下にカーブを要求したのか。打たれた瞬間に「何でや」という疑問が渦巻いた。
その前の打席。つまり四回の打席はカウント2-2から直球で空振りの三振に仕留めていた。
このスイングを見て、1日の中日戦で2三振した丸に対し、原監督が試合後に「準備不足」と語っていたのが理解できた。
明らかにスイングが鈍いのだ。この速球に遅れている打者に対して、どうして?
森下はいいカーブを持っている。それが投球の幅を広げているのは確かだ。また配球の組み立てにおいて基本線というのはある。
しかし、ゲームは動いている。この日の森下の球威なら、すべて直球でもよかったと思えるくらいだ。真ん中高めの甘い球。失投ではあったが、カーブを要求すること自体がミステイク。
スイングは鈍くても丸には遅い球を打つ技術はある。若い捕手に厳しい言い方になるが、観察不足と言わざるを得ない。
一方、炭谷。ビエイラが降板したあとの九回1死一、二塁。投手桜井、打者石原。2球で簡単に追い込んだあと、桜井のフォークボールが暴投になり二、三塁に変わった場面。
一打逆転、暴投もできない。この危険な状況で炭谷は再度、フォークを要求し、石原の空振りを誘った。
コースすら外れる外角の完全なボール球。打者心理の逆をつくような予想しない球に石原のバットは止まらなかった。
あの大ピンチをゼロでしのいだ炭谷のインサイドワーク。彼が試合終盤にマスクをかぶる理由がここにある。敵チームとはいえ、若い坂倉には勉強になったのではないか。
鈴木誠也の逆転2ランや菊池涼介のファインプレーが出た、いい試合。それを観察不足でフイにしてしまう。捕手というポジションは難しいが、この経験を生かして成長することをチームも望んでいると思う。