神島の隻腕エース・笠松子龍7回3失点も惜敗 「手がないことを言い訳にしたくない」
「高校野球和歌山大会・2回戦、初芝橋本6-3神島」(17日、紀三井寺公園野球場)
神島が初芝橋本に敗れ、初戦で敗退した。
左手に先天性の障害を抱える、笠松子龍投手(3年)が先発。7回12安打を浴びながらも、131球の熱投で3失点に抑え込んだ。
初回、連打と四球でピンチを招き、2点の先制を許す。ただ、続く2死満塁の危機ではこの日最速の136キロ直球で二ゴロに打ち取り、後続を断った。二回にも1点を失ったが、その後は無失点。七回には、右足をつるアクシデントにも見舞われたが、笑顔でマウンドに戻り2死満塁のピンチを切り抜けた。
「手がないことを言い訳にしたくない」と、高校野球の約2年半を駆け抜けた。打撃では、左袖アンダーシャツをバットに巻き付けて構える。投手では、左投手用のグラブを左手で添え、投げる。捕球の際は右手に器用に持ち替え、バント処理は右手の素手で処理する。この日も、五、七回の2度の送りバントを難なく処理した。
五回2死二塁では、一ゴロでベースカバーに入ったが、セーフの判定。その間に二塁走者が本塁を狙ったが、すぐさまグラブを外してボールを手に取り送球。追加点を許さなかった。
中瀬学監督は「ハートが強く、負けず嫌い。ハンディがありながらも工夫して、みんなと同じようにトレーニングして力をつけてくれた」とエースの頑張りに目を細めた。
「悔しい」。涙ながらに口にした一言に全てが詰まっていた。2年時の夏にはイップスになり、制球難になった。それでも、「監督や先輩が思いきって投げろと言ってくれた」と周りの支えで克服し、背番号1を背負った。
「いろんな意味で、いろいろな物を残してくれた。感謝しかないです」と指揮官。笠松子は「つらい時もあったけど楽しくできてよかった」と、晴れやかな表情を見せた。ハンディキャップは関係ない。笠松子は完全燃焼で高校野球を終えた。