神島の隻腕エース・笠松子龍、涙の完全燃焼 「言い訳にしたくない」力投7回3失点
「高校野球和歌山大会・2回戦、初芝橋本6-3神島」(17日、紀三井寺球場)
和歌山大会では神島が2回戦で初芝橋本に敗れた。左手に先天性の障害を抱えるエース右腕・笠松子龍投手(3年)が7回12安打を浴びながらも3失点と力投。ハンディを乗り越え、完全燃焼で高校野球生活を終えた。沖縄大会の準決勝では沖縄尚学と中部商が決勝に進出。きょう18日に全国のトップを切って代表校が決定する。
大粒の涙を流しながら言った「悔しい」の一言に全てが詰まっていた。生まれつき左手に障害を抱える神島・笠松子は7回3失点と奮闘するも初戦敗退。それでもエースナンバーを背負って最後の夏を戦いきった。
意地を見せたのは七回2死二、三塁のピンチを迎えた場面だ。すでに130球を投げ、顔を真っ赤にした笠松子の右ふくらはぎがつった。一度ベンチに下がったが、中瀬学監督(41)の「あと一人だぞ」というゲキに奮い立ち、再びマウンドに向かった。
申告敬遠で2死満塁となったが「抑えてやろう」-。歯を食いしばって投げた1球で左飛に打ち取り、隻腕のエースは無失点で切り抜けた。「手がないことを言い訳にしたくない」と、打撃では左袖のアンダーシャツをグリップに巻き付けて構える。マウンドでは、左投手用のグラブを左手に添えて投じた。
捕球時は右手にグラブを持ち替え、この日2度のバント処理は素手でつかんだ。「(グラブの)付け替えの練習はしたけど苦労はなかった」と笠松子。大好きな野球のため、人一倍の努力は惜しまなかった。
この日、直球は自己最速を更新する136キロをマーク。「つらい時があったけど、楽しくできてよかった」と笑った。ハンディを乗り越えた神島のエースは完全燃焼で最後の夏を終えた。