なぜリクエストしない?高代延博氏、巨人戦分析「立岡はベンチにアピールしなければ」
「DeNA5-5巨人」(9日、横浜スタジアム)
巨人が九回の反撃で辛くも引き分けた。だが、デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は追いついたことより、先発した戸郷の不用意な投球と、リクエストの権利を放棄したような立岡のアピールのなさに疑問を投げかけた。
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まず初回の戸郷の投球について触れてみたい。立ち上がりでもあり、カウントで優位に立ちたいのは分かるが、あまりにもストライクにこだわりすぎたように思う。
結果、打たれるべくして打たれた。そんな印象を受ける失点シーンだった。
先頭の桑原にショートへの内野安打を打たれたのは、バットが折れて坂本が処理しにくかったこともあり、仕方なかったが、オースティンに浴びた左翼への2ランは不用意極まりなかった。
オースティンはDeNA打線の中で最も警戒しなければならない打者。初球の甘めが絶対禁物なのは言うまでもない。ところが、投げたのは真ん中へのスライダー。
若い投手に辛辣な言い方になるが、とても真剣勝負を挑んでいるとは思えないような、慎重さに欠ける1球だった。
続く宮崎には内角への厳しい直球を左翼へ本塁打されたが、完全に読まれたような打ち方だった。
九回に懸命の8人攻撃で3点を返し、何とか引き分けに持ち込んだ巨人打線だが、初回の3失点はあっという間。球をそろえすぎたのが原因だった。「14」という球数にそれが表れていた。
ボール球をうまく挟み込んで投げていれば、もっと違う形になっていたはず。その後、尻上がりに調子を上げていったのは、ボールゾーンを使い始めたからだ。
戸郷にはもっと野球の怖さ、1球の怖さを感じてほしいね。
もう一つ、気になったのは八回の立岡。三ゴロを放った際、宮崎の送球が本塁側にそれたため、一塁手がタッチプレーを試みた。
しかし、このタッチは“空振り”したように見えた。いや、どう見ても空タッチだ。
立岡自身も一塁ベースを駆け抜けたあと、「アウト」という塁審の判定にセーフのゼスチャーをして、納得していないようだった。
ならばベンチへ向かってリクエストを要求するようアピールしなければいけない。選手自身があやふやだと、権利の行使には踏み切れない。選手の意思表示が必要なのだ。
立岡は出場機会の少ない選手で少し酷ではあるが、これは見えない失策と言わざるを得ない。
仮にセーフなら一死一塁。まだ亀井が残っている。八回裏の2失点を前に、展開が変わっていたかもしれない。小さなきっかけで流れが変わる。野球とはそういうスポーツだ。
執念で引き分けに持ち込んだのも巨人だったが、執念の薄さを感じさせたのも巨人。何とも言えない試合だった。