沢村賞 選考委員“苦言”で物議「該当者なしを増やしても」評論家の視点

 プロ野球創設期の名投手、沢村栄治を記念した「沢村賞」の選考基準を巡り、物議を醸している。

 パドレスのダルビッシュ有投手は22日、沢村賞の選考委員から現役投手に苦言が出たことについて意見。日本ハム時代の07年に同賞を受賞しているが、ツイッターで「時代が変わってきている分、起用法も変わりますから数字も変わりますよね。今の時代にあった評価をしてあげるべきでは?」と指摘した。2度沢村賞に輝いているツインズ・前田健太投手もダルビッシュの意見に「いいね!」を付け、同調した。

 前日にオリックス・山本由伸投手の受賞を発表。その席で選考委員の村田兆治氏は山本以外の投手に候補者がいなかったことに「レベルが低すぎるっていうことも正直感じます」と苦言。委員長の堀内恒夫氏も今季は9回打ち切りが影響していることは考慮したうえで、「セ・リーグの投手の成績では沢村賞には値しない」と厳しく指摘していた。

 近年、投手分業制が定着してからは投球回、完投数へのハードルが上がり、選考基準の見直しを求める声が少なくない。大リーグのサイ・ヤング賞の対象は先発に限らず、リリーフ投手も対象。選考委員にもそうした声は届いており、昨年は堀内委員長が見直しを検討する考えにも言及していた。

 ただ、デイリースポーツ評論家の関本四十四氏が「そもそも沢村賞は先発完投型の投手に与えられるものとしてスタートした。選考委員の村田兆治にしても堀内さんにもしても、投げまくっていた人だから」というように、同賞における「完投」へのこだわりは根強い。

 前日の選考委員では日本シリーズで第2戦の高橋の完封なども話題に挙がり、村田氏は「最後まで頑張っている、つらいところを投げ抜いていくというところに感動も、夢も与えていく」とした。堀内氏も10完投は維持したい考えで「もちろんそうだと思います。やっぱり沢村さんの名前を汚さない」と語っている。

 「今年のポストシーズンでは高橋だけでなく、山本、奥川も完封している。あれを見ると、先発、完投、完封というのは醍醐味のひとつであるのは確か。特に日本では中6日で回っていることも多い訳だから」と関本氏。一方で沢村賞は2000年以降で該当者なしは2度あることから「時代が変わってきて、その選考委員がどう考えるかだけど、該当者なしを増やしてもいいとは思う」とした。

 「レベルが低い」という言葉がひとり歩きしている印象もあるが、OBの思いはひとつだ。山田久志氏は「沢村賞候補が3人、4人と。我々選考委員を困らせるような。そういうピッチャーの出現を切に願ってレベルアップをしていただきたいと、こういうふうに思います」と、苦言の“真意”も語っている。

 【沢村賞とは】プロ野球創生期に巨人のエースとして活躍し、太平洋戦争で戦死した大投手、沢村栄治の栄誉と功績をたたえ、1947年に制定。50年の2リーグ分立後はセ・リーグのみに限定されていたが、89年からパ・リーグにも対象が拡大された。選考対象は先発完投型の投手で、選考基準は(1)15勝以上(2)150奪三振以上(3)完投10試合以上(4)防御率2・50以下(5)投球回数200回以上(6)登板25試合以上(7)勝率6割以上。なお、クオリティースタートの達成率を含む他の成績も考慮。受賞者には金杯と副賞300万円が贈られる。

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