イチロー氏 国学院久我山で指導 手紙の縁で実現 3年田村さん“ラブコール”に応えた
レジェンドが2021年も高校球界にやってきた-。米大リーグ・マリナーズなどで活躍したイチロー氏(48)=現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が29日、国学院久我山を訪問。都内の同校グラウンドで指導した。2020年の智弁和歌山に続くコーチングは、一通の手紙から実現。今夏に引退した3年生含む82人の前で、実技を交えながら技術を伝えた。
極上の“出張指導”が、今秋の東京大会を制した実力校に施された。イチロー氏の心を動かしたのは、国学院久我山ナインから送られた手紙。今夏で引退した田村優樹さん(3年)が2020年、レジェンドと知り合うと、同級生とともに熱い“ラブコール”を送った。
今年1月、「野球がうまくなりたい、強くなりたい、そのために来てほしい」。文面から伝わる情熱は確かに届いた。イチロー氏はグラウンドへ到着すると、練習前にあいさつ。輪になっていた部員に語りかけた。
「すごい気持ちの伝わる手紙。大切なものが入っている引き出しに、大切に保管している。一緒に練習しましょう」。現役時代と変わらぬ体形、軽やかな動きで高校球児たちとともに約3時間、汗を流した。
言葉を交わすだけでなく、自らがお手本となった。打撃ではバットを手に、ティー打撃やフリー打撃を実践。部員から「えぐい」と漏れるほどの打球を披露しつつ、三振をしないテクニックについて説いた。
「見逃すと思ったらバットが出てくる。それが僕の目指しているところ。手が最後に出てくる。手がキープできている証拠。どうやってそこ(厳しい球)をファウルにできるか」。日米通算4367安打を積み上げてきた卓越した理論を、デレク・ジーター(元ヤンキース)といったメジャーリーガーを例に挙げながら伝えた。
走塁では「考えないと永遠にできない」と真っすぐ走るといった基本的な面から、跳びはねながらリードするデメリットなど持論を展開した。「最高の状態を求めても、なかなかキープできない。最高の結果を出すためにフラットな状態にいるのがポイント」と精神面も助言。守備も含めて“イチ流”の教えがナインに広がった。
夢のような時間が終わる頃には、日が暮れていた。19年に学生野球資格回復制度の研修会を受講し、昨年2月に資格を回復。昨年指導した智弁和歌山は今夏の甲子園を制した。今後も年内に2校を訪問予定。大スターのイズムは着実に高校球界へ還元されていく。
◆国学院久我山高等学校 東京都杉並区に所在。1944年4月創立。都内唯一の男女「別学」を採用。男子生徒、女子生徒に別れ、それぞれ授業を受けている。サッカー部、ラグビー部などは全国的強豪として知られ、難関大学への合格実績も豊富。文武両道が掲げられている。野球部創部は45年4月。甲子園には春夏通算6度出場し、1勝6敗。主なOBはロッテ・井口資仁監督、日本ハム・矢野謙次2軍打撃コーチ。