「オリックスの日本シリーズ敗戦は最強チームへの通過点」 両チーム知る馬場敏史氏評論

 まれに見る接戦となった日本シリーズが、ヤクルトの20年ぶりの優勝という形で幕を閉じ、いまだ余韻が残っている。あの熱戦を通じて、敗れたオリックスの、来季以降、さらに強くなるであろうことを感じ取っていたのが、今季まで西武でヘッドコーチ格として作戦兼守備走塁コーチを務めたプロ野球OBの馬場敏史氏(56)だ。選手、コーチでヤクルト、オリックス両チームのユニホームを着た馬場氏が、今季のオリックスの躍進には「まだ先がある」と断言した。

  ◇  ◇

 よく似たチーム、と言われた今回の日本シリーズ。確かに共通点も多かったけど、個性も際立っていましたね。それは選手個々にも言えることだし、優勝したヤクルト・高津監督、惜しくも敗れたオリックス・中嶋監督もそうです。

 両チームに所属した身としては複雑でした。ヤクルトベンチにも、監督を始めとして一緒に戦った仲間が指導者としています。ただ、私は1995年、オリックスの三塁手として日本シリーズに出場し、1勝4敗とヤクルトに敗れました。その思いがある分、少しだけオリックスに肩入れしながら見ていましたね。

 今回の、素晴らしい日本シリーズを通じて思いを強くしたのは「オリックスはもっと強くなりそうだな」というところでした。

 その理由をお話しする前に少し、シリーズを振り返ります。両チームとも、非常に先発投手が頑張りましたよね。これが大接戦の、第一の要因です。そして、中盤以降に出てきた外国人投手が失点するケースが多かった。これも両チーム共通です。

 ただオリックスとすれば、チームの支柱と言える吉田正が故障を押して出場。攻守において、万全で戦えなかったことは、とても気の毒に思って見ていました。

 そうした状況が続く中で、初戦に敗戦投手となったマクガフを最後まで使い切った高津監督はさすが、自身も抑え投手として修羅場をくぐってきただけある、肝の据わった采配でしたね。

 一方の中嶋監督は負けん気の強さと視野の広さのバランスが取れています。

 これが、一層の躍進を感じさせる理由です。昨年、中嶋監督にグラウンドで会って、少し話をしました。当時は、借金17で西村前監督が辞任、中嶋監督は代行という形で2軍監督から1軍に移ったタイミングです。

 詳しくは聞けませんでしたが「もう少し若い選手を伸ばしてやりたい」、「(自身も)もう少し経験を積みたい」という思いがあったように感じました。

 しかも最下位チームを預かる。過去には毎年のように監督交代していた…、など、大変な役どころだなと思ったものです。

 ところが中嶋監督はそれを逆手に取った。「だったら、1軍監督として若いチームを育てよう」と開き直ったのではないでしょうか。それが大躍進につながってのリーグ優勝です。杉本、福田、紅林…。彼らの大きな成長は、ある程度メンバーを固定して戦えるまでになりました。

 その集大成とも言えるのが、今回の日本シリーズです。結果は負けですが、だからこそ肥やしになるところは大きい。特に若い選手の経験値は計り知れないほどでしょう。来季のオリックスは間違いなく、今年以上の強さを誇ると思いますよ。

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