広島・大道 ラオウのバットへし折った 同学年・由伸と投げ合い“ノーノーデビュー”
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。今回は広島・大道温貴投手(22)がプロ初先発した6月11日・オリックス戦(京セラ)にスポットを当てる。同学年の相手先発・山本由伸投手(23)と投げ合い、五回まで無安打無失点だった“ノーノーデビュー”の裏側を、広島担当の向亮祐記者(30)がひもとく。
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試合前に抱いた不安は、回を重ねるごとに消えていった。開幕から中継ぎが主戦場だった大道が、6月11日・オリックス戦(京セラ)でプロ初先発した。
相手は同学年の山本。球界を代表する右腕との投げ合いを楽しみにしていた一方、「初回でKOされるんじゃないか、という不安しかなかった」と当時の心境を明かす。
初回、楽々と三者凡退のスタートを切った山本に対し、大道は2四球で1死一、二塁のピンチを招く。何とか後続を打ち取ると、続く二回に光が差し込んだ。1死から7番・杉本への4球目、内角に直球を投げ込んでバットをへし折った。
「あそこで(内角へ)1球決まって(投球の)幅が広がった」
その後、6球目に投じた内角高めの143キロで捕邪飛。初回は「ボールが手に付いていない感じ」だったが、二回から五回までは全て三者凡退。五回は全て違う球種で3者連続三振に斬り、山本と互角に投げ合った。
試合の分岐点となったのは、インサイドへの1球。初先発は5回無安打無失点で勝敗こそ付かなかったが、その後は先発で2勝を挙げた。のちにパ・リーグ本塁打王に輝く強打者を力でねじ伏せた直球が指針となり「先発で勝てた要因じゃないですかね」と振り返った。
当時、チームは苦しんでいた。コロナ禍というアクシデントに見舞われ、交流戦は3勝12敗3分け。先発投手の駒不足に悩まされた時期でもあった。だからこそ、右腕の“ノーノーデビュー”には大きな価値があった。登板後は大瀬良から連絡を受け「『先発陣にとって、すごくいい刺激になったと思うよ』と言ってもらいました」と、ねぎらいの言葉をもらった。
今季は24試合に登板して4勝4敗、防御率4・75。2軍降格もあったが、先発とリリーフで存在感を示した。「4点リードの場面で抑えをやらせてもらった。そして中継ぎ、セットアッパー、ビハインドでのロングリリーフ、先発。セーブシチュエーション以外、全部やりました」。場面に応じてベストを尽くし、それぞれの持ち場で味わった苦労は今後への糧となった。
「やっぱり、この経験を生かしたい。自分で幅を広げてどこでもやれるように調整していきたい」。経験という名の貴重な財産を得た大道。2年目の活躍に期待は大きく膨らむ。