デビュー戦でアキレス腱断裂の巨人助っ人 人柄よく“日本流”見たかった
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。今回は4月27日のヤクルト戦(神宮)で起こった巨人のエリック・テームズ外野手(35)の悲劇。デビュー戦でアキレス腱(けん)断裂の大けがを負い、1試合で退団した助っ人を巨人担当の山本航己記者(30)が振り返る。
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予想外のアクシデントだった。4月27日・ヤクルト戦は序盤から乱打戦の展開。1点リードの三回1死一、二塁の場面で、この日が満を持してのデビュー戦だった新外国人・テームズの前に打球が飛んだ。左翼の助っ人はバウンドを合わせられず、体勢を崩しながら後逸。その場に倒れ込んでいる間に、走者が次々と進塁した。
同点とされ、なおも二、三塁となったところでようやく異変に気付いた。倒れ込んだまま立ち上がれないテームズ。その隣で丸が「×」マークを作った。リプレー映像を確認すると、ワンバウンドで高く弾んだ打球をジャンプして捕球しようとし、着地の際に右足を痛めたようだった。
メジャー通算96発を誇るテームズは、同196発のスモークとともに、今年の巨人打線の中核を担う新戦力として期待されていた。コロナ禍の影響で3月29日に来日し、隔離期間を経て2軍戦で打率5割、4本塁打をマーク。大きな期待感の中で1軍昇格し、初回と三回の打席では空振り三振だったが、当たればスタンド、という豪快なスイングを見せていた。
韓国リーグでも3年間プレーした経験があり、「自分は異なる環境に順応するのが得意。日本流にそういう姿勢で対応したい」と意気込んでいた新助っ人。だが、デビュー戦の序盤に担架で運ばれて交代。しばらくすると、無観客の神宮に救急車のサイレンが鳴り響いた。
病院へ搬送された後、テームズは自身のSNSに短く「Wow」とだけ投稿。「右アキレス腱断裂」と診断され、シーズン中の復帰が絶望的となった。
悲劇から一夜明け、28日の試合前に意外な光景が目に飛び込んできた。松葉づえをついたテームズが律義に巨人ベンチへ姿を見せ、あいさつしていた。チームメートや元木ヘッドコーチらと話し込んでいたが、悲壮な感じはなく、ポジティブな印象を受けた。
4月の入団会見では、職人のような硬い雰囲気を醸し出していたスモークとは対照的に、終始柔和な笑顔だったテームズ。「食べるのは好きなので、東京ではいい店を探したい。神戸牛、大トロ」。人柄が良く、“日本流”を取り入れた助っ人がどれだけ活躍するかを見られなかったのは残念だった。